DeMarker(デマーカー)の使い方――RSIが見逃す「価格の勢い」を捉えるオシレーター

RSIで「買われすぎ」と判断して売りエントリーしたのに、そこから更に上昇して損切りになった。こんな経験を持つFXトレーダーは多い。

RSIは終値だけで計算されるため、ローソク足のヒゲが示す「売買圧力の変化」を見落とすという構造的な弱点がある。終値は前回とほとんど同じでも、上ヒゲが伸びていれば「上値を試したが押し返された」という情報が含まれている。RSIはこの情報を拾えない。

この弱点を克服するために作られたのがDeMarker(デマーカー、DeM)だ。DeMarkerは終値ではなく高値と安値の変化を使って売買圧力を測定する。そのため、RSIでは検出しにくい「上値の重さ」「下値の堅さ」の変化を早期に捉えることができる。

しかもMT4/MT5に標準搭載されており、カスタムインジケーターのダウンロードは一切不要。すぐに使い始められる。

この記事では、DeMarkerの仕組み、RSIとの具体的な違い、MT4での設定方法、そして実践的なトレード手法を解説する。

DeMarkerとは?|開発者トム・デマークの思想

DeMarkerを開発したトーマス・R・デマーク(Thomas R. DeMark)は、ジョージ・ソロスやゴールドマン・サックスの投資顧問を務めた実績を持つアメリカのテクニカルアナリストだ。50年以上のキャリアで70以上のテクニカルツールを開発しており、FXの世界ではTDシーケンシャル(TD Sequential)の開発者としても知られている。

デマークがDeMarkerを開発した目的は、既存のオシレーターが抱える「遅延」の問題を最小化することだった。RSIやストキャスティクスといった一般的なオシレーターは「遅行指標」に分類されるが、DeMarkerは先行指標(Leading Indicator)として設計されている。つまり、トレンドの変化が起きた後に反応するのではなく、変化が起きる前にシグナルを出すことを目指している。

この「先行性」は、DeMarkerが終値ではなく高値・安値という「ローソク足の両端」を使う計算方法から生まれている。

DeMarkerの計算方法|高値と安値で「売買圧力」を測る

DeMarkerの値は0〜1の範囲で表示される(一部のプラットフォームでは0〜100)。0.7以上が買われすぎ、0.3以下が売られすぎの目安だ。

計算の核心は、「当期の高値が前期の高値より高いか」「当期の安値が前期の安値より低いか」という比較にある。

まずDeMAX(上昇圧力)を求める。当期の高値が前期の高値より高ければ、その差をDeMAXとする。そうでなければDeMAXはゼロ。次にDeMIN(下降圧力)を求める。当期の安値が前期の安値より低ければ、その差をDeMINとする。そうでなければDeMINはゼロ。最後にそれぞれのN期間移動平均を取り、以下の式で算出する。

DeMarker = SMA(DeMAX, N) ÷ [SMA(DeMAX, N) + SMA(DeMIN, N)]

この計算が意味するのは、「直近N期間のうち、高値が切り上がった幅の合計と、安値が切り下がった幅の合計を比べて、どちらの圧力が強いか」ということだ。高値の切り上げが多ければDeMarkerは1に近づき(買い圧力が強い)、安値の切り下げが多ければ0に近づく(売り圧力が強い)。

DeMarkerとRSIの決定的な違い

DeMarkerとRSIは「0〜1(または0〜100)の範囲で買われすぎ・売られすぎを判断する」という点では同じだ。しかし、計算に使う価格データが根本的に異なる

RSI:終値のみ。 RSIは「前日の終値と今日の終値の差」から上昇幅と下降幅を計算する。つまり、ローソク足の胴体部分しか見ていない。上ヒゲが長くても、終値が前日終値より低ければ「下落」として計算される。

DeMarker:高値と安値。 DeMarkerは高値と安値の変化から計算される。上ヒゲが伸びていれば(=高値が前期より高ければ)DeMAXが増え、DeMarkerが上昇する。つまり、終値が変わっていなくても「上を試す動き」をキャッチできる。

実践上の違い: この差が最も顕著に現れるのは「長い上ヒゲ(下ヒゲ)が出現した局面」だ。たとえば、上昇トレンドの終盤で上ヒゲの長いローソク足が連続する場合、DeMarkerは「買い圧力は続いているが上値で売り戻されている」という情報を早期にキャッチする。RSIが0.7に到達する前にDeMarkerが先に0.7に到達し、「買われすぎ」のシグナルを出すことがある。

→ RSIの基本的な使い方は「RSI・MACDの使い方」で解説。

MT4でのDeMarkerの設定方法

DeMarkerはMT4/MT5に標準搭載されているため、インストール作業は不要だ。

表示手順: MT4の上部メニューから「挿入」→「インディケータ」→「オシレーター」→「DeMarker」をクリック。パラメーター設定画面が開くので、期間を設定して「OK」を押す。チャート下部のサブウィンドウにDeMarkerが表示される。

期間設定の目安: デフォルトは14期間。開発者のデマーク自身は13期間を推奨している。トレードスタイルに応じて調整する。スキャルピングの場合は7〜10が適切で、感度が上がりシグナルが早くなるがダマシも増える。デイトレードでは13〜14(デフォルト)がバランスがよい。スイングトレードなら20〜25に設定し、長期のトレンドの過熱感を判断する。

注意: デマークは元々日足以上の時間足での使用を前提に開発された。1時間足未満の短い時間足では信頼性が下がるため、H1(1時間足)以上での使用を推奨する。

→ テクニカル分析全般の基礎は「FXチャート分析入門」で体系的に学べる。

DeMarkerの実践手法3選

DeMarkerは単体で使うこともできるが、他のインジケーターと組み合わせたほうが精度は上がる。以下の3つの手法は、それぞれ異なる相場環境で機能する。

手法①:0.7/0.3のクロスバック(レンジ相場向け)

最もシンプルな使い方だ。DeMarkerが0.7を超えた後、0.7を下回る瞬間に売りを検討する。逆に、0.3を下回った後、0.3を上回る瞬間に買いを検討する。

ポイントは「超えた瞬間ではなく、戻ってきた瞬間」でエントリーすること。0.7を超えた時点で売ると、強いトレンド中に逆行して損切りになりやすい。0.7から戻ってくる=買い圧力が実際に減退し始めた、と確認してからの方が精度が高い。

この手法はレンジ相場で最も機能する。明確なトレンドが出ている場合は、DeMarkerがオーバーシュートゾーン(0.7以上/0.3以下)に長時間張り付くため、クロスバックを待つ間に含み損が拡大するリスクがある。

手法②:ダイバージェンス(トレンド転換の検出)

DeMarkerでダイバージェンスを検出する方法はRSIと同じ考え方だ。

弱気のダイバージェンスは、価格が高値を更新しているのにDeMarkerの山が前回より低い状態。上昇トレンドの勢いが内部的に弱まっていることを示す。強気のダイバージェンスは、価格が安値を更新しているのにDeMarkerの谷が前回より高い状態。下降トレンドの勢いが弱まっていることを示す。

DeMarkerは高値・安値ベースで計算されるため、RSIよりもダイバージェンスの検出が早い傾向がある。特に「価格の高値は更新しているが、上ヒゲが短くなっている」ような微妙な変化をDeMarkerは敏感に拾う。

→ ダイバージェンスの概念については「RSI・MACDの使い方」のダイバージェンスセクションも参照。

手法③:移動平均線との組み合わせ(トレンドフォロー)

DeMarkerの弱点であるトレンド相場での使いにくさを、移動平均線で補う手法だ。

まず、20EMA(指数平滑移動平均線)の傾きでトレンド方向を判断する。EMAが上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンド。次に、トレンド方向と一致するDeMarkerのシグナルのみを採用する。具体的には、上昇トレンド(EMA上向き)のときは、DeMarkerが0.3以下まで下がった後の反転のみを買いエントリーの候補とする。下降トレンド(EMA下向き)のときは、DeMarkerが0.7以上まで上がった後の反転のみを売りエントリーの候補とする。

この方法なら、トレンドに逆行するエントリーが排除される。DeMarkerの「一時的な押し目/戻り」を狙う感覚だ。

→ 移動平均線の使い方は「移動平均線の見方と使い方」を参照。

DeMarkerの3つの注意点

注意点①:強いトレンドでは張り付く。 RSIと同様、DeMarkerも強いトレンド相場では0.7以上(または0.3以下)に長時間張り付く。「0.7を超えたから売り」と機械的にエントリーすると、トレンドに逆行して大きな損失を被る。トレンドの有無を移動平均線やダウ理論で確認した上で使うこと。

注意点②:TradingViewには標準搭載されていない。 MT4/MT5にはDeMarkerが標準搭載されているが、TradingViewには入っていない。TradingViewで使いたい場合はコミュニティスクリプトから「DeMarker」を検索して追加する必要がある。このプラットフォーム対応の非対称性が、DeMarkerがRSIやMACDに比べて知名度が低い一因だ。

注意点③:短い時間足では信頼性が下がる。 デマーク自身は日足以上での使用を前提としていた。1時間足未満では高値・安値の変動がノイズに支配されやすく、DeMarkerのシグナルの信頼性が低下する。スキャルピングで使う場合は期間設定を短くしつつ、必ず上位足のトレンド方向を確認すること。

→ 損切りルールの重要性は「損切りルールの作り方」で詳しく解説。

よくある質問(FAQ)

Q. DeMarkerとRSIの違いは何ですか?
A. 最大の違いは計算に使う価格データ。RSIは終値のみ、DeMarkerは高値と安値を使う。DeMarkerはローソク足のヒゲの動きを反映するため、RSIでは見えにくい「上値の重さ」「下値の堅さ」といった売買圧力の変化を早期に捉えられる。

Q. DeMarkerはMT4に標準搭載されていますか?
A. はい。MT4/MT5ともに標準搭載。「挿入」→「インディケータ」→「オシレーター」→「DeMarker」で追加できる。ダウンロードやインストール作業は不要。

Q. DeMarkerの数値が0.7を超えたら即売りですか?
A. いいえ。0.7超えは「買われすぎ」を示すが、強いトレンドでは0.7以上に長時間張り付く。0.7を超えた後に0.7を下回る瞬間(=買い圧力の減退を確認)を待ってから売りを検討するほうが精度が高い。

Q. DeMarkerの推奨期間設定は?
A. デマーク自身は13期間を推奨。MT4のデフォルトは14。スキャルピングなら7〜10、デイトレードなら13〜14、スイングなら20以上が目安。

Q. DeMarkerはTradingViewで使えますか?
A. TradingViewにはDeMarkerが標準搭載されていないが、コミュニティスクリプトとして複数公開されている。MT4/MT5では標準搭載なので、そちらのほうが手軽。

まとめ|RSIの「死角」をDeMarkerで補う

ステップ1:MT4でRSIとDeMarkerを並べて表示する。 いつも見ている通貨ペアの日足チャートを開き、RSI(14)とDeMarker(14)を同時にサブウィンドウに表示しよう。上ヒゲの長いローソク足が出た時に、2つのインジケーターがどう異なる反応をするかを1週間分観察するだけで、DeMarkerの特性が体感できる。

ステップ2:レンジ相場でクロスバック手法を練習する。 過去チャートでDeMarkerが0.7を超えた後に0.7を下回ったポイント、0.3を下回った後に0.3を上回ったポイントをマークし、その後の値動きを確認しよう。レンジ相場でどれだけ機能するか、トレンド相場でどう失敗するかを20事例ほど検証することで、使い所が見えてくる。

ステップ3:デモトレードで移動平均線との組み合わせを実践する。 20EMAでトレンド方向を確認し、DeMarkerの押し目/戻りシグナルでエントリー。まずはリスクゼロのデモ環境で20回以上実践してから判断しよう。→ FXデモトレード(無料・口座開設不要)

DeMarkerは「RSIの影に隠れた実力派」だ。MT4に最初から入っているのに、存在すら知らないトレーダーが大半。RSIだけでは拾えない売買圧力の変化を補完するツールとして、一度試してみる価値は十分にある。