Tickチャート(ティックチャート)入門――FXスキャルピングで使う実践手法

「1分足より短いチャートがあれば、もっと精度の高いエントリーができるのに」

スキャルピングをやっているトレーダーなら、一度はこう思ったことがあるだろう。実は、1分足よりも短い時間軸で市場の動きを捉えるチャートが存在する。それがTickチャート(ティックチャート)だ。

通常のチャートが「時間」で区切るのに対し、Tickチャートは「取引回数」で区切る。この違いが、スキャルピングにおいて決定的な優位性をもたらす場面がある。

この記事では、Tickチャートの仕組みから、実際にスキャルピングで使うための設定方法と手法まで、FX白熱教室が10年の運営で蓄積した知見をもとに解説する。

Tickチャートとは?|「時間」ではなく「取引回数」で描くチャート

Tickチャート(ティックチャート、Tick Chart)とは、一定の取引回数が発生するたびにローソク足(バー)が1本生成されるチャートのこと。

通常の時間足チャート(1分足、5分足、1時間足など)は、設定した時間が経過するごとに1本のローソク足が描かれる。5分足なら、相場が動いていようが動いていまいが、5分ごとに必ず1本生成される。

一方、Tickチャートは取引が一定回数発生した時点でローソク足が完成する。例えば「100Tickチャート」なら、100回の取引が成立するたびに1本のローソク足が描かれる。

この違いが何を意味するか。時間足チャートでは、東京市場の昼休みのように取引が閑散としている時間帯でも、5分ごとに律儀にローソク足が生成される。結果として、ほとんど値動きのない「ノイズ」のようなローソク足が並ぶ。Tickチャートなら、取引が少ない時間帯はローソク足の生成が遅くなり、取引が活発な時間帯は一気にローソク足が増える。つまり、市場の「本当の活性度」がチャートの密度として視覚化される。

時間足チャートとの決定的な3つの違い

Tickチャートと時間足チャートの違いを理解することが、このチャートを活用する第一歩になる。

違い①:ローソク足の生成基準が「時間」ではなく「取引量」。 前述の通り、Tickチャートは取引回数が基準だ。ロンドン市場とニューヨーク市場が重なる時間帯(日本時間22時〜翌2時頃)は取引が活発になるため、Tickチャートのローソク足は高速で生成される。逆に、早朝のオセアニア時間帯はローソク足の生成がゆっくりになる。時間足チャートではこの「市場の呼吸」が見えない。

違い②:閑散時間帯のノイズが自動的にフィルタリングされる。 時間足チャートでは取引が少ない時間帯にも同じ間隔でローソク足が描かれるため、ほぼ値動きのない「空のローソク足」がチャート上に並ぶ。これがテクニカル分析の精度を下げる原因になる。Tickチャートなら、取引が少ない=ローソク足が生成されない、というシンプルな対応関係になるため、分析に使うべき「本当の値動き」だけがチャートに残る。

違い③:ブレイクアウトの検知が速い。 相場が急変してブレイクアウトが発生すると、取引回数が一気に増える。Tickチャートではこの瞬間にローソク足が高速で次々と生成されるため、ブレイクアウトの発生を時間足チャートよりも早く視覚的に捉えることができる。 スキャルピングにおいて、この数秒の差が勝敗を分ける。

Tick数の設定|通貨ペアの流動性で変える

Tickチャートを使い始めるとき、最初に迷うのが「Tick数をいくつに設定するか」だ。この数値はチャートの「解像度」を決めるものであり、使う通貨ペアの流動性によって変える必要がある。

流動性が高い通貨ペア(EUR/USD、USD/JPY、GBP/USDなど主要ペア)は、1分間に発生する取引回数が非常に多い。Tick数を大きくしないとローソク足が高速で生成されすぎて追いきれなくなる。目安は100〜233Tick

流動性が中程度の通貨ペア(AUD/USD、EUR/GBP、USD/CADなど)は、233〜500Tickが適切だ。

流動性が低い通貨ペア(マイナー通貨やクロス円の一部)は取引回数自体が少ないため、Tick数を小さくしすぎるとローソク足1本あたりの値幅が極端に小さくなり、ノイズだらけになる。500〜610Tick程度が目安。

フィボナッチ数列を使う設定も多くの海外トレーダーに支持されている。フィボナッチ数列の144、233、610は、相場のリズムと親和性が高いとされ、マルチタイムフレーム分析で組み合わせる際にも使いやすい。

マルチタイムフレーム(MTF)でTickチャートを使う場合の推奨設定例として、EUR/USDなら、短期(エントリー判断用)に144Tick、中期(トレンド方向確認用)に610Tick、長期(環境認識用)に2584Tickといった組み合わせがある。すべてフィボナッチ数で統一することで、各時間軸間のバランスが保たれる。

マルチタイムフレーム分析の基本的な考え方は「FXチャート分析入門――テクニカル・ファンダメンタルズ」で解説している。

Tickチャートが使えるプラットフォーム

Tickチャートはすべての取引プラットフォームで使えるわけではない。主要なプラットフォームの対応状況を整理する。

TradingViewはTickチャートに対応している。1T(1Tick)から1000Tまで設定可能で、最大40,000本のTickベースのバーを表示できる。ブラウザベースなのでインストール不要、無料プランでも基本的なTickチャートは利用可能だ。FXを始めたばかりの人がTickチャートを試すなら、まずTradingViewが最も手軽な選択肢になる。

NinjaTraderはTickチャートとの相性が非常によく、先物トレーダーやスキャルパーに人気がある。デモ口座なら無料で使え、Tickデータの精度も高い。

cTraderもTickチャートに対応しており、FXブローカーの中ではTickデータの品質が高いと評価されている。

MT4/MT5は残念ながらTickチャートにネイティブ対応していない。MT4の気配値ウィンドウでTickの動きをラインチャートとして表示することは可能だが、ローソク足としてのTickチャートは標準機能では生成できない。カスタムインジケーターを導入することで疑似的に表示する方法はあるが、データの精度やプラットフォームの制約から、本格的にTickチャートを使いたいならTradingViewやNinjaTraderに移行するほうが合理的だ。

ボブ・ボルマン式|70Tickチャート×20EMAのスキャルピング手法

Tickチャートを使ったスキャルピングで最も体系化された手法が、アメリカのトレーダー、ボブ・ボルマン(Bob Volman)が著書『Forex Price Action Scalping』で提唱した70Tickチャート×20EMAの手法だ。

この手法の核心は「プライスアクション(値動きそのもの)」を読むことにあり、複雑なインジケーターは使わない。チャートに表示するのは70Tickのローソク足と20期間EMA(指数平滑移動平均線)のみ。

移動平均線の基礎は「移動平均線の見方と使い方」を参照。

手法の概要

70Tickチャートを使い、20EMAの傾きでトレンド方向を判断する。エントリーは、トレンド方向への「均衡が崩れるポイント」を待つ。ボルマンは7種類のセットアップを定義している。ここでは実践で使いやすい3つに絞って解説する。

セットアップ①:ダブル同時線ブレイク(Double Doji Break)

20EMAがはっきり上向きまたは下向きの状態で、小さなローソク足(同時線=始値と終値がほぼ同じ)が2本以上連続する。これは買い勢力と売り勢力が一時的に均衡していることを示す。この均衡が崩れた瞬間、つまり同時線の高値(上昇トレンドの場合)を次のローソク足がブレイクしたポイントでエントリーする。

損切りは同時線群の安値(上昇トレンドの場合)の直下に置く。

セットアップ②:レンジブレイク(Range Break)

価格が一定の範囲で上下を繰り返す「レンジ」を形成した後、その上辺または下辺をブレイクする瞬間を狙う。レンジ内でのローソク足が多いほど(=取引回数が多いほど)、ブレイク後の動きが大きくなりやすい。

ポイントは、ブレイク直前にレンジの端で小さなローソク足が密集する「ビルドアップ」が見られるかどうか。ビルドアップがある場合はブレイクの信頼性が高く、ない場合はフェイクブレイク(だまし)の可能性が高まる。

セットアップ③:セカンドブレイク(Second Break)

最初のブレイクアウトが一旦押し戻された後、再度同じ方向にブレイクする2回目のタイミングでエントリーする。「最初のブレイクでエントリーして損切りになった」経験がある人は多いだろう。セカンドブレイクは「1回目で売り勢力(または買い勢力)を振るい落とした後の本命の動き」であり、だましに引っかかるリスクが低い。

この手法を練習する方法

いきなりリアルマネーで70Tickチャートのスキャルピングを始めるのは危険だ。まずはTradingViewのペーパートレード機能、またはFX白熱教室のデモトレード(無料・口座開設不要)で練習することを強く推奨する。

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Tickチャート×スキャルピングで守るべき5つのルール

Tickチャートのスキャルピングは利益が出る一方で、正しいルールを守らないと一瞬で資金を溶かす。以下の5つは最低限守ってほしいルール。

ルール①:流動性の高い時間帯だけトレードする。 Tickチャートの強みは「取引量で区切る」こと。取引量が少ない時間帯(日本時間6〜8時、年末年始など)はTickチャートの利点が消え、ノイズだらけになる。FXでスキャルピングするならロンドン〜ニューヨーク市場の重なる時間帯(日本時間22時〜翌2時)が最適だ。FXの取引時間帯について詳しくは「FXの取引時間」を参照。

ルール②:スプレッドの狭い通貨ペアを選ぶ。 スキャルピングでは数pipsの利益を積み重ねるため、スプレッド(買値と売値の差)の影響が大きい。EUR/USDやUSD/JPYなど、スプレッドが0.2〜0.3銭のペアを選ぶ。スプレッドの基礎は「スプレッドとは?」で解説。

ルール③:損切りは即座に実行する。 Tickチャートのスキャルピングは1回のトレードで5〜15pipsを狙うスタイル。損切りも同じ幅かそれ以下に設定し、ルール通りに即座に実行する。「もう少し待てば戻るかも」という考えは、スキャルピングでは命取りになる。損切りルールの基本は「損切りルールの作り方」に詳しい。

ルール④:指標発表前後はトレードしない。 雇用統計やFOMCなど重要経済指標の発表前後はスプレッドが急拡大し、スリッページ(注文価格と約定価格のずれ)が発生しやすくなる。Tickチャートではこの瞬間にローソク足が爆発的に生成されるため、判断が追いつかない。経済指標カレンダーを確認し、発表30分前にはポジションを閉じておく。

ルール⑤:1日のトレード回数と損失上限を決めておく。 Tickチャートは次から次へとエントリーチャンスが見えるため、過剰トレード(オーバートレード)に陥りやすい。「1日最大10トレード」「1日の損失が資金の2%に達したら終了」など、自分自身のブレーキを事前に設定しておく。資金管理の考え方は「FXの資金管理」を参照。

よくある質問(FAQ)

Q. TickチャートはMT4で使えますか?

MT4の気配値ウィンドウでTickの動きをラインチャートとして確認することは可能だ。ただし、ローソク足としてのTickチャートはMT4/MT5ともにネイティブ非対応。カスタムインジケーターを使えば疑似的に表示できるが、データ精度の面ではTradingViewやNinjaTraderのほうが優れている。

Q. Tickチャートの推奨設定はいくつですか?

通貨ペアの流動性による。EUR/USDなど主要ペアなら100〜233Tick、流動性の低いペアなら500〜610Tickが目安。フィボナッチ数列(144, 233, 610)で統一するとマルチタイムフレーム分析との相性がよい。

Q. Tickチャートと1分足チャートの違いは何ですか?

1分足は時間で区切り、Tickチャートは取引回数で区切る。実務上の最大の違いは「閑散時間帯の扱い」。1分足は取引がなくてもローソク足が生成されるが、Tickチャートは取引がなければ生成されない。この性質により、Tickチャートは市場が活発な時間帯のみに集中した分析が自動的にできる。

Q. Tickチャートは土日でも練習できますか?

FX市場は土日休場のためリアルタイムのTickチャートは動かない。TradingViewのリプレイ機能を使えば過去データで練習は可能。またFX白熱教室のデモトレードは過去の実データを使用しているため、曜日を問わず取引練習ができる。→ FXデモトレード(無料・口座開設不要)

Q. Tickチャートが使えるプラットフォームは?

TradingView(1T〜1000Tまで対応、無料プランあり)、NinjaTrader(デモ無料)、cTraderが代表的。MT4/MT5はネイティブ非対応だが、カスタムインジケーターで疑似対応は可能。

まとめ|Tickチャートで「市場の呼吸」を読む

ステップ1:まずTradingViewで100Tickチャートを表示してみる。 いつも見ている通貨ペアの1分足とTickチャートを並べて、ロンドンオープン前後のローソク足の密度の違いを観察しよう。この「密度の変化」がTickチャートの本質だ。

ステップ2:70Tick+20EMAでボルマン式の3つのセットアップを探す。 ダブル同時線ブレイク、レンジブレイク、セカンドブレイク。まずはリアルタイムではなく、過去チャートを遡って「このパターンが出た後に相場はどう動いたか」を20事例ほど観察する。

ステップ3:デモトレードで20回実践する。 知識だけでは利益は出ない。FX白熱教室のデモトレード(無料・口座開設不要)、またはTradingViewのペーパートレードで、実際に20回以上エントリーしてから実戦に移ろう。→ FXデモトレードを今すぐ試す(無料)

Tickチャートは、時間足チャートでは見えなかった「市場の呼吸」を可視化してくれる。スキャルピングの精度を一段上げたいトレーダーにとって、有力な武器になるはずだ。