RSIを使っていて、こう感じたことはないだろうか。「相場が急に動いた時、RSIの反応が遅くてエントリーが間に合わない」。
RSI(Relative Strength Index)はFXで最も使われているオシレーター系インジケーターのひとつだが、致命的な弱点がある。計算期間が固定されていることだ。通常14期間で設定されるRSIは、ボラティリティが急変しても同じ速度でしか反応しない。
この弱点を克服するために開発されたのがVLDMI(Variable Length Dynamic Momentum Index=可変長ダイナミックモメンタムインデックス)だ。VLDMIはRSIの計算期間をボラティリティに応じて自動で変動させる。相場が激しく動く時は期間を短くして素早く反応し、相場が落ち着いている時は期間を長くしてノイズを抑える。
この記事では、VLDMIの仕組み、MT4へのインストール方法、RSIとの具体的な違い、そして実践的な使い方を解説する。
VLDMIとは?|ボラティリティで「速度」が変わるRSI
VLDMI(Variable Length Dynamic Momentum Index)は、元々はTushar Chande(トゥシャー・シャンデ)とStanley Kroll(スタンリー・クロール)が1993年に提唱したDynamic Momentum Index(DMI)をベースにしたインジケーターだ。彼らの著書『The New Technical Trader』で詳しく解説されている。
VLDMIの核心は「RSIの計算期間を可変にする」というシンプルなアイデアにある。
通常のRSIは14期間固定だ。相場がどれだけ荒れていても、どれだけ静かでも、常に直近14本のローソク足で計算される。これは「車のスピードに関係なく、常に同じ間隔でブレーキの効きが一定」のようなもので、スピードが出ている(ボラティリティが高い)時にはブレーキが間に合わない。
VLDMIはこの問題を解決する。ボラティリティが高い時は計算期間を短く(3〜5期間程度まで)して反応速度を上げ、ボラティリティが低い時は計算期間を長く(最大30期間程度まで)してダマシを減らす。
計算のしくみ(概要)
VLDMIの期間調整は標準偏差を使って行われる。具体的な流れは以下の通り。
まず、直近5期間の終値の標準偏差を計算する。次に、その標準偏差の10期間移動平均を算出し、標準偏差を移動平均で割った値(ボラティリティインデックス)を求める。そして、RSIの基準期間(14)をこのボラティリティインデックスで割り、小数点以下を切り捨てた値がVLDMIの動的期間となる。最後に、この動的期間を最小値(デフォルト3)と最大値(デフォルト30)の範囲内に収めた上で、この期間を使ってRSIと同じ計算を行う。
つまりVLDMIの出力値自体は0〜100のRSIそのもので、70以上が買われすぎ、30以下が売られすぎという判断基準もRSIと同じだ。違いは「期間が固定か可変か」だけ。
RSIとVLDMIの違い|チャートで比較すると一目瞭然
RSIとVLDMIを同じチャートに並べると、違いが明確に見える。
反応速度の違い: ボラティリティが低い静かな相場では、RSIとVLDMIの動きはほぼ同じになる。しかし、相場が急に動き始めた瞬間にVLDMIの計算期間が短くなり、RSIよりも先にオーバーシュート(70超え・30割れ)を検出する。この「先に反応する」特性が、エントリータイミングの改善につながる。
ダマシの違い: 反応が速い分、VLDMIはRSIよりもダマシが多い。特に「行ってこい」の値動き(急騰→急落、または急落→急騰)では、VLDMIが一瞬で70超え→即座に反転→30割れ、というように短期間で極端な値を出すことがある。これはメリットの裏返しであり、VLDMIを単体で使うことが推奨されない理由でもある。
→ RSIの基本的な見方は「RSI・MACDの使い方」で解説している。
MT4へのインストール方法
VLDMIはMT4に標準搭載されていないため、カスタムインジケーターとしてインストールする必要がある。
手順1: ex4ファイル(MTF_VLDMI.ex4)を入手する。FX白熱教室の旧サイトで配布していたファイル、またはOANDAが提供している「OANDA_Multi_VLDMI」など、信頼できるソースから入手すること。
手順2: MT4のメニューから「ファイル」→「データフォルダを開く」をクリック。
手順3: 開いたフォルダ内の「MQL4」→「Indicators」フォルダを開き、ダウンロードしたex4ファイルをコピーして貼り付ける。
手順4: MT4を再起動する。ナビゲーターウィンドウの「インディケータ」フォルダ内に「MTF_VLDMI」(またはダウンロードしたファイル名)が表示される。
手順5: チャート上にドラッグ&ドロップして表示。初回表示時に「全般」タブ(または「仕様」タブ)で「DLLの使用を許可する」にチェックを入れること。これを忘れるとインジケーターが動作しない。
パラメーター設定と調整のコツ
MTF_VLDMIの主要パラメーターとその役割を理解しておくと、自分のトレードスタイルに合わせた調整ができる。
TimeFrame: MTF(マルチタイムフレーム)の表示先時間足を指定するパラメーター。「0」に設定すると現在表示中のチャートの時間足でVLDMIを計算する。「60」にすると1時間足、「240」にすると4時間足のVLDMIを現在のチャート上に表示できる。
VLDMIPeriod: RSIの基準期間に相当する値。デフォルトは14。この値を大きくすると反応が鈍くなりダマシが減る。小さくすると反応が速くなるがダマシが増える。スキャルピングなら10〜12、デイトレードなら14(デフォルト)、スイングなら18〜21程度が目安。
DevPeriod: 標準偏差の計算期間。デフォルトは5。この値を大きくすると、期間の変動がより長期のボラティリティに基づくようになり、安定する。
DevMAPeriod: 標準偏差の移動平均期間。デフォルトは10。DevPeriodと同様に、大きくすると期間変動が滑らかになる。
実践的な調整の考え方: 「ダマシが多すぎる」と感じたら、まずVLDMIPeriodを16〜18に上げてみる。それでもノイズが多ければDevPeriodを7〜10に上げる。逆に「RSIとあまり変わらない」と感じたら、VLDMIPeriodを10〜12に下げてVLDMIの特性を強調する。
MTF機能の使い方|上位足のVLDMIで精度を上げる
MTF_VLDMIの最大の特徴はマルチタイムフレーム対応であること。これにより、下位足のチャートを見ながら上位足のVLDMIを確認するという分析が1画面で可能になる。
典型的な使い方: 5分足チャートでスキャルピングする場合、TimeFrameパラメーターを「60」(1時間足)に設定し、1時間足のVLDMIを5分足チャート上に重ねて表示する。1時間足のVLDMIが50以上(上昇モメンタム)の時は買いエントリーのみ、50以下(下降モメンタム)の時は売りエントリーのみに限定する。これだけでトレンドに逆行するエントリーが大幅に減る。
2つのVLDMIを重ねる手法: さらに精度を上げるなら、同じチャートにVLDMIを2つ表示する。1つ目はTimeFrame=0(現在の時間足)、2つ目はTimeFrame=上位足。両方のVLDMIが同じ方向(両方とも50以上、または両方とも50以下)の時のみエントリーを検討する。
→ マルチタイムフレーム分析の基本は「FXチャート分析入門」で体系的に学べる。
VLDMIの実践的な使い方3選
VLDMIは単体で使うには反応が鋭すぎるため、他のテクニカル分析と組み合わせて使うことが前提だ。実践で機能しやすい3つの使い方を紹介する。
使い方①:ダイバージェンス検出
VLDMIが最も力を発揮するのがダイバージェンスの検出だ。ダイバージェンスとは、価格の動きとオシレーターの動きが逆行する現象で、トレンド転換のサインとして信頼性が高い。
VLDMIはRSIより反応が速いため、ダイバージェンスの発生もRSIより早く検出できる。例えば、価格が高値を更新しているのにVLDMIの山が前回より低い場合(弱気のダイバージェンス)、上昇トレンドの終焉が近い可能性がある。RSIでは検出できないがVLDMIでは検出できる、というケースが特にボラティリティの変動が激しい局面で発生する。
使い方②:フィボナッチ・リトレースメントとの併用
フィボナッチ・リトレースメントの38.2%や61.8%のラインに価格が到達した時、VLDMIが同時に30以下(売られすぎ)を示していれば、反発の確率が高まる。フィボナッチが「どこで反発するか」を示し、VLDMIが「今の勢いは本当に弱まっているか」を示す。この2つの根拠が重なるポイントはエントリーの精度が上がる。
使い方③:プライスアクションとの併用
サポートライン付近でピンバー(ヒゲの長いローソク足)が出現し、同時にVLDMIが30以下から反転上昇し始めたら、買いエントリーの根拠が3つ重なる(サポートライン+プライスアクション+VLDMI)。根拠が多いほどトレードの期待値は上がる。
→ 損切りの設定方法は「損切りルールの作り方」を参照。
VLDMIの注意点と限界
VLDMIには明確な限界がある。理解した上で使うことが重要だ。
限界①:ダマシが多い。 繰り返しになるが、VLDMIの反応速度はメリットとデメリットの両面がある。急騰→急落のような「行ってこい」相場では、VLDMIが買いシグナルを出した直後に売りシグナルが出るという事態が頻発する。対策はMTF機能で上位足の方向と一致する場合のみシグナルを採用すること、またはダイバージェンスのみに注目して70/30のクロスは無視すること。
限界②:MT4カスタムインジケーターへの依存。 VLDMIはMT4/MT5に標準搭載されていない。カスタムインジケーターは配布元が開発を終了するとアップデートが止まり、プラットフォームのバージョンアップで動作しなくなるリスクがある。VLDMIと同一の原理を持つ「Dynamic Momentum Index」はTradingViewのコミュニティスクリプトとして複数公開されており、MT4に依存したくない場合はTradingViewでの利用も検討できる。
限界③:トレンド相場での天井・底の当てにくさ。 VLDMIはオシレーターである以上、強いトレンド相場では70以上(または30以下)に「張り付く」現象が起きる。これはRSIと同じ弱点だ。VLDMIが70以上だからといって即座に売りエントリーするのは危険で、トレンドの方向を別の手段(移動平均線、ダウ理論など)で確認した上で判断すること。
→ 移動平均線を使ったトレンド判断は「移動平均線の見方と使い方」を参照。
よくある質問(FAQ)
Q. VLDMIとRSIの違いは何ですか?
A. RSIは計算期間が固定(通常14期間)だが、VLDMIはボラティリティに応じて期間が自動変動する。ボラティリティが高い時は期間が短くなり反応が速くなり、低い時は期間が長くなり滑らかになる。VLDMIはRSIよりトレンド転換の初動を早く捉えられるが、その分ダマシも多い。
Q. VLDMIはMT4標準搭載ですか?
A. いいえ。カスタムインジケーターとしてex4ファイルをダウンロードし、MT4のデータフォルダ内のIndicatorsフォルダにインストールする必要がある。インストール時に「DLLの使用を許可する」にチェックを入れること。
Q. VLDMIのMTF(マルチタイムフレーム)機能とは?
A. MTF対応のVLDMIでは、表示中の時間足とは異なる上位足のVLDMIを同じチャート上に重ねて表示できる。例えば5分足チャートに1時間足のVLDMIを表示し、上位足の方向と一致する場合のみエントリーする、という使い方ができる。
Q. VLDMIのダマシが多いのですが?
A. VLDMIは反応が速い分、ダマシが出やすい。対策として、VLDMIPeriodの値を大きくする(16〜18程度)、MTF機能で上位足と方向が一致する時のみシグナルを採用する、70/30のクロスではなくダイバージェンスのみに絞る、などが有効。
Q. VLDMIはTradingViewで使えますか?
A. TradingViewには「VLDMI」という名称のインジケーターは標準搭載されていないが、同じ原理の「Dynamic Momentum Index」がコミュニティスクリプトとして複数公開されている。everget氏やHPotter氏のスクリプトが有名。計算ロジックは同一だ。
まとめ|VLDMIは「RSI上級者」のためのツール
ステップ1:まずRSIを十分に使いこなしているか確認する。 VLDMIは「RSIの改良版」であり、RSIの基本(70/30の判断、ダイバージェンス、トレンド方向での使い分け)を理解していない状態で使っても効果は薄い。RSIにまだ慣れていないなら、先にRSIを使い込むことを推奨する。→ RSI・MACDの使い方
ステップ2:MT4にインストールし、RSIと並べて表示する。 同じチャートにRSI(14)とVLDMI(デフォルト設定)を並べて1週間分の値動きを観察しよう。「VLDMIがRSIより先に反応した箇所」と「VLDMIがダマシだった箇所」を記録するだけで、このインジケーターの特性が体感できる。
ステップ3:デモトレードでMTF機能と組み合わせて実践する。 上位足VLDMIでトレンド方向を確認し、現在足VLDMIでエントリータイミングを計る。この2段階フィルターを、まずはリスクゼロのデモ環境で20回以上実践してから判断しよう。→ FXデモトレード(無料・口座開設不要)
VLDMIは知名度こそ低いが、RSIの「固定期間」という根本的な弱点に対して明確な解決策を提示したインジケーターだ。RSIに物足りなさを感じているトレーダーにとって、試す価値は十分にある。