ZigZagとは?|「分析補助ツール」であって「シグナルツール」ではない
チャートを開いて最初にすべきことは何か。多くのトレーダーは「インジケーターを表示する」と答えるだろう。しかし、それよりも先にやるべきことがある。チャートの「骨格」を把握することだ。
骨格とは、どこが直近のスイングハイ(高値の山)で、どこがスイングロー(安値の谷)なのか。この構造がわからなければ、トレンドの方向も、サポート・レジスタンスの位置も、エリオット波動のカウントも始まらない。
しかし、特に初心者にとって、チャート上の無数のローソク足からスイングポイントを正確に特定するのは意外と難しい。細かい上下動に惑わされて、本当に重要な高値・安値を見誤る。
ZigZag(ジグザグ)インジケーターは、この問題を解決する。チャートのノイズ(小さな値動き)をフィルタリングし、重要なスイングハイとスイングローだけを直線で結んで表示する。いわば、チャートのX線写真を撮るようなものだ。骨格だけを浮かび上がらせることで、相場の構造が一目で見える。
MT4/MT5、TradingViewのいずれにも標準搭載されており、追加インストールは不要。この記事では、ZigZagの仕組み、パラメーター設定、そして実戦での3つの使い方を解説する。
ZigZagインジケーターの最も重要な特徴を最初に明確にしておく。ZigZagは売買シグナルを出すインジケーターではない。RSIのように「買われすぎ/売られすぎ」を示すわけでも、移動平均線のようにゴールデンクロスを出すわけでもない。
ZigZagの役割は、チャート上の小さな値動きを無視し、一定以上の値幅を持つスイングの高値と安値だけを直線で結ぶことだ。これにより、チャートの複雑な上下動が「山と谷の連続」というシンプルな構造に変換される。
この「構造の可視化」が何の役に立つのか。主に3つの用途がある。ダウ理論に基づくトレンド判断(高値・安値が切り上がっているか切り下がっているか)、エリオット波動のカウント補助(波のカウントが格段に楽になる)、フィボナッチ・リトレースメントの起点・終点の特定(どのスイングを基準にフィボナッチを引くべきか明確になる)。
つまりZigZagは「分析の土台を整えるツール」であり、その上に他の手法を重ねることで初めてトレードに活きる。
ZigZagの仕組みとパラメーター|Depth・Deviation・Backstep
ZigZagの動作原理はシンプルだ。「直前のスイングポイントから一定以上の値幅が動いたら、新しいスイングポイントを認識して線を引く」。この「一定以上」の基準を決めるのが3つのパラメーターだ。
Depth(深さ): スイングポイントを検出するために遡る最小バー数。デフォルトは12。値を大きくすると大きなスイングのみを表示し、小さくすると細かいスイングも拾う。
Deviation(偏差): 新しいスイングポイントを認識するために必要な最小の価格変動率。MT4のデフォルトは5(%ではなくポイント単位の場合もある)。TradingViewでは%指定が可能。この値が大きいほどノイズが除去され、小さいスイングが無視される。
Backstep(後退): 連続するスイングポイント間の最小バー数。デフォルトは3。直前のスイングポイントからこのバー数以内では新しいスイングポイントが認識されない。
FXでの推奨設定: FXは株式に比べてボラティリティが小さいため、Deviationは低めに設定する。日足ならDeviation 1〜3%が一般的。株式の日足では5〜10%が使われるので、そのまま適用するとFXではスイングがほとんど表示されない。スキャルピングではDepthを5〜8に下げて細かいスイングを拾い、スイングトレードでは12〜20に上げて大きな流れだけを見る。
→ テクニカル分析全般の基礎は「FXチャート分析入門」で体系的に学べる。
MT4・TradingViewでの表示方法
MT4の場合: 上部メニューから「挿入」→「インディケータ」→「カスタム」→「ZigZag」を選択。パラメーター設定画面でDepth・Deviation・Backstepを調整して「OK」を押すと、チャート上にジグザグのラインが表示される。MT4ではZigZagは「カスタム」カテゴリに分類されているが、標準搭載なのでダウンロードは不要。
TradingViewの場合: チャート上部の「インジケーター」ボタンをクリックし、検索バーに「Zig Zag」と入力。TradingView標準のZig Zagインジケーターを選択すると表示される。TradingViewではDeviation(%)で感度を調整でき、直感的にわかりやすい。
リペイント(再描画)の正しい理解
ZigZagを使う上で必ず理解しておくべきことがある。ZigZagはリペイント(再描画)する。
リペイントとは、新しい価格データが入るとZigZagの最新のラインが引き直される現象だ。例えば、ZigZagが「ここがスイングハイだ」と一旦ラインを引いた後、さらに高値が更新されるとラインが上方に移動する。
ただし、確定済みの過去のスイングポイントは変わらない。変わるのは常に「最新の未確定ライン」だけだ。この特性を正しく理解していれば、ZigZagは十分に実用的なツールになる。
実践上のルールは明快で、ZigZagの最新ライン(まだ確定していないライン)でリアルタイムの売買判断をしてはいけない。確定済みのスイングポイントをベースにトレンド判断やフィボナッチの描画を行い、エントリー判断は他のインジケーターやプライスアクションで行う。これがZigZagの正しい使い方だ。
ZigZagの実戦手法3選
ZigZagは「分析の土台」として使い、その上に他の手法を重ねる。以下の3つは、それぞれ異なるアプローチで機能する。
手法①:ダウ理論に基づくトレンド判断
ダウ理論では、高値と安値が共に切り上がっていれば上昇トレンド、共に切り下がっていれば下降トレンドと定義する。しかし、ローソク足の細かい上下動の中から「どこが高値で、どこが安値か」を正確に判断するのは、経験を積まないと難しい。
ZigZagを表示すれば、スイングハイとスイングローが自動で特定される。あとはそれらが切り上がっているか切り下がっているかを確認するだけだ。
上昇トレンドなら、ZigZagの山が前回の山より高く(Higher High)、谷が前回の谷より高い(Higher Low)。この構造が続いている限りトレンドは健全と判断する。山が前回より低くなった(Lower High)、または谷が前回より低くなった(Lower Low)場合、トレンド転換の可能性がある。
損切りの位置もZigZagで明確になる。買いポジションなら直近のスイングロー(ZigZagの谷)の少し下に置く。このスイングローを割ったらトレンド構造が崩壊したことを意味するため、ポジションを手放す根拠になる。
→ 損切りルールの詳細は「損切りルールの作り方」を参照。
手法②:フィボナッチ・リトレースメントとの併用
フィボナッチ・リトレースメントを引くには「起点(スイングロー)」と「終点(スイングハイ)」を決める必要がある。しかし、どのスイングポイントを基準にすべきか迷うことが多い。
ZigZagを表示すれば、フィボナッチの起点と終点が自動的に特定される。ZigZagが示す直近のスイングローからスイングハイ(上昇トレンドの場合)にフィボナッチ・リトレースメントを引く。38.2%、50%、61.8%のラインが押し目買いの候補ゾーンになる。
この手法のポイントは、ZigZagのDeviation設定を適切に調整すること。Deviationが小さすぎると細かいスイングまで拾ってしまい、フィボナッチを引く基準が定まらない。日足なら2〜3%程度に設定し、「意味のある」スイングだけを表示するのがコツだ。
手法③:エリオット波動のカウント補助
エリオット波動理論では、トレンド方向に5波(推進波)、逆方向に3波(修正波)が形成されるとする。しかし、チャート上でこの波をカウントするのは経験者でも難しい。ノイズに惑わされて波の数を数え間違えたり、どこから新しい波が始まるかで迷ったりする。
ZigZagを使うと、チャートが「山と谷の連なり」に単純化されるため、波のカウントが格段に楽になる。推進波の1-2-3-4-5と修正波のA-B-Cを、ZigZagのスイングポイントに当てはめて確認できる。
ここで重要なのは、ZigZagの設定を波のスケールに合わせること。大きな推進波をカウントしたいならDepthを大きくし、修正波の内部構造を見たいならDepthを小さくする。2つの異なる設定のZigZagを同時に表示して、大きな波と小さな波の関係を確認する方法も有効だ。
→ 移動平均線を使ったトレンド確認は「移動平均線の見方と使い方」を参照。
ZigZagの3つの注意点
注意点①:リペイントを忘れない。 ZigZagの最新ラインは未確定であり、新しいデータが入ると引き直される。「今ZigZagが下向きに引かれているから売り」という使い方は危険。過去の確定したスイングポイントを分析に使い、直近の未確定ラインはあくまで「現時点での暫定的な見方」として扱うこと。
注意点②:設定で見え方が全く変わる。 Depth・Deviation・Backstepの値を変えるだけで、同じチャートでも全く異なるスイングポイントが表示される。「正解の設定」は存在しない。トレードスタイル(スキャルピング/デイトレード/スイング)と通貨ペアのボラティリティに応じて、自分に合った設定を検証する必要がある。
注意点③:ZigZag単体でトレードしない。 繰り返しになるが、ZigZagは分析補助ツールであり、売買シグナルは出さない。ZigZagでチャートの構造を把握した上で、プライスアクション、RSI、移動平均線などで具体的なエントリー判断を行うのが正しい使い方だ。
→ RSIの使い方は「RSI・MACDの使い方」で解説。
よくある質問(FAQ)
Q. ZigZagインジケーターで売買シグナルは出ますか?
A. いいえ。ZigZagは売買シグナルを出すインジケーターではなく、チャートの骨格を可視化する分析補助ツール。スイングの高値・安値を自動で結ぶことで、トレンド判断やエリオット波動のカウント、フィボナッチの起点特定を助ける。ZigZag単体でエントリーするのではなく、他の手法と組み合わせて使う。
Q. ZigZagのリペイントとは?
A. 新しい価格データが入るとZigZagの最新ラインが引き直される現象。確定した過去のスイングポイントは変わらないが、直近のラインは未確定で変動する。ZigZagの最新ラインでリアルタイムの売買判断をするのは危険。
Q. ZigZagのDepth・Deviation・Backstepとは?
A. Depthはスイングポイント検出に遡る最小バー数、Deviationは新しいスイングを認識する最小変動率、Backstepはスイングポイント間の最小バー数。Depthを大きくすると大きなスイングのみ表示され、小さくすると細かいスイングも拾う。
Q. ZigZagの推奨設定は?
A. FX日足ならDeviation 1〜3%が一般的。株式では5〜10%。FXはボラティリティが小さいため低めの設定が適切。スキャルピングではDepth 5〜8、スイングトレードではDepth 12〜20が目安。
Q. ZigZagはMT4・TradingViewに標準搭載ですか?
A. はい。MT4では「挿入→インディケータ→カスタム→ZigZag」、TradingViewでは検索から「Zig Zag」で表示できる。どちらもダウンロード不要。
まとめ|ZigZagで「チャートの骨格」を見る習慣をつける
ステップ1:いつものチャートにZigZagを表示する。 いつも見ている通貨ペアの日足チャートを開き、ZigZag(デフォルト設定)を表示しよう。ローソク足だけでは見えにくかった「スイングの高値・安値の連なり」が視覚的に浮かび上がる。まずはこの「骨格」を見る習慣をつけることが第一歩。
ステップ2:ダウ理論でトレンドを判断する。 ZigZagのスイングポイントが「高値切り上げ・安値切り上げ」なら上昇トレンド、「高値切り下げ・安値切り下げ」なら下降トレンド。20事例ほど過去チャートで確認し、トレンドの構造が崩壊するポイント(=損切りを置くべき位置)を把握しよう。
ステップ2.5:ZigZagのスイングポイントからチャネルラインを引く。 ZigZagが特定した安値同士・高値同士を結べば、自然とチャネルラインが浮かび上がる。トレンドの「通路」を視覚化し、ブレイクアウトの判断材料にしよう。→ チャネルラインの引き方|MT4の5ツール完全ガイド
ステップ3:デモトレードでフィボナッチと組み合わせて実践する。 ZigZagが特定したスイングロー→スイングハイにフィボナッチ・リトレースメントを引き、38.2%〜61.8%ゾーンでの反発を狙う。まずはリスクゼロのデモ環境で20回以上実践しよう。→ FXデモトレード(無料・口座開設不要)
ZigZagは「地味なツール」だ。派手なシグナルも出さなければ、未来を予測もしない。しかし、チャート分析の出発点である「骨格の把握」をこれほど効率的にこなすツールは他にない。RSIもMACDもボリンジャーバンドも、すべてはチャートの構造を正しく理解した上で使ってこそ機能する。ZigZagはその「土台」を整えるツールだ。