Category: チャート分析

テクニカル分析・チャートの読み方を解説

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一目均衡表の使い方|5本の線と「雲」で相場の全体像を一目で掴む
トレンドを見るために移動平均線を表示し、モメンタムを確認するためにRSIを追加し、サポート・レジスタンスを確認するためにフィボナッチを引く――。 「1つのインジケーターで、これら全部を同時に見られたら?」 その答えが、一目均衡表(いちもくきんこうひょう / Ichimoku Kinko Hyo)だ。 日本人ジャーナリストの細田悟一(ペンネーム:一目山人)が1930年代に開発を始め、30年以上の検証を経て1969年に公開したこのインジケーターは、5本の線と1つの「雲」で、トレンドの方向・モメンタムの強弱・未来のサポレジ・過去との比較を一目で("Ichimoku"=ひと目で)把握できる。 英語圏では "Ichimoku Cloud" として知られ、欧米のプロトレーダーの間でも「日本が生んだ最も完成度の高いテクニカルツール」として高い評価を受けている。MT4/MT5、TradingViewのいずれにも標準搭載されており、追加インストールは不要。 この記事では、5つの構成要素を1つずつ分解して解説し、最強のシグナル「三役好転/三役逆転」の読み方と実戦での使い方を解説する。 一目均衡表の5つの構成要素|まず「何が何をしているか」を理解する 一目均衡表を初めて表示すると、線が多すぎて混乱する。だが、5つの要素が「何を見ているか」を理解すれば、すべてが論理的に繋がる。 USD/JPY 日足:転換線・基準線・先行スパンA/B・遅行スパンの5本で構成される一目均衡表。先行スパンA・B間の「雲」がトレンド方向を視覚的に示す。 ①転換線(てんかんせん / Tenkan-sen) 計算: 過去9期間の最高値と最安値の中間値。 (9期間の最高値 + 9期間の最安値) ÷ 2 役割: 短期のモメンタムと方向を示す。移動平均線の9期間SMAに近い機能だが、終値ではなく高値・安値の中間値を使う点が異なる。転換線が上向きなら短期的に上昇勢力が優勢、下向きなら下降勢力が優勢。 ②基準線(きじゅんせん / Kijun-sen) 計算: 過去26期間の最高値と最安値の中間値。 (26期間の最高値 + 26期間の最安値) ÷ 2 役割: 中期のトレンド方向と均衡状態を示す。一目均衡表の「基準」となる線で、5要素の中で最も重要。基準線が水平なら相場は均衡状態(レンジ)、傾きがあればトレンドが発生している。また、基準線は動的なサポート/レジスタンスとして機能し、トレンド中の押し目/戻りの目安になる。 転換線×基準線のクロス: 転換線が基準線を上抜け→買いシグナル(好転)、下抜け→売りシグナル(逆転)。移動平均線のゴールデンクロス/デッドクロスと同じ概念だが、一目均衡表では雲との位置関係によってシグナルの強弱が3段階に分かれる(後述)。 ③先行スパンA(せんこうスパンA / Senkou Span A) 計算: 転換線と基準線の中間値を、26期間先に描画する。 (転換線 + 基準線) ÷ 2 → 26期間先にプロット 役割: 「未来のサポレジ」の一辺を形成する。先行スパンAは転換線と基準線から派生するため、比較的「速く」動く。 ④先行スパンB(せんこうスパンB...
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Accumulation/Distribution(A/Dライン)の使い方|チャートの裏で「誰が動かしているか」を読む
チャートの表面だけを見ていると、大事なことを見落とす。 例えば、価格が上昇を続けている。ローソク足も移動平均線も強気。だが、その上昇を支えている買い圧力は本当に強いのか? それとも、大口のプレーヤーが裏で静かに売り抜けている(Distribution)最中なのか? 逆もある。価格が下落を続けている。誰もが弱気を確信している。だが、その下落の裏で大口が静かに仕込んでいる(Accumulation)としたら? この「価格の裏側で起きている売買圧力の偏り」を可視化するのが、Accumulation/Distribution(A/Dライン)だ。Marc Chaikin(マーク・チャイキン)が1980年代に開発した出来高ベースのインジケーターで、株式分析の定番ツールとして30年以上使われている。 ただし、FXで使う場合には無視できない制約がある。FXには取引所集中型の出来高データが存在せず、ティックボリューム(価格変動回数)で代用するため、株式市場での精度をそのまま期待できない。この制約を正直に伝えた上で、FXでもA/Dラインが役立つ場面と、具体的な使い方を解説する。 A/Dラインとは?|「終値がレンジ内のどこで閉じたか」に着目する A/Dラインの核心は一つの問いに集約される。「その足の終値は、高値〜安値のレンジのどこで閉じたか?」 レンジの上半分で閉じた=買い圧力が優勢(Accumulation)。レンジの下半分で閉じた=売り圧力が優勢(Distribution)。この判定に出来高を掛け合わせ、累積していくのがA/Dラインだ。 計算は3つのステップで行われる。 ステップ1:マネーフローマルチプライヤー(MFM)を求める。 MFM = ((終値 − 安値) − (高値 − 終値)) ÷ (高値 − 安値) この値は−1から+1の範囲をとる。終値が高値と一致すれば+1、安値と一致すれば−1、レンジのちょうど中央なら0になる。 ステップ2:マネーフローボリューム(MFV)を求める。 MFV = MFM × 出来高 MFMに出来高を掛けることで、「買い圧力が優勢な足ほど、出来高が大きいほど、A/Dラインへの影響が大きくなる」仕組みになる。 ステップ3:累積する。 A/D(現在の足)= A/D(前の足)+ MFV(現在の足) A/Dラインは累積値であり、RSIのように0〜100の範囲で振動するわけではない。上がり続けることも下がり続けることもある。重要なのはA/Dラインの絶対値ではなく、方向(上昇しているか下降しているか)だ。 → テクニカル分析全般の基礎は「FXチャート分析入門」で体系的に学べる。 A/DラインとOBVの違い|「足の中身を見るか、前日比だけを見るか」 A/Dラインとよく比較されるのがOBV(On-Balance Volume)だ。どちらも出来高ベースの累積インジケーターだが、決定的な違いがある。 OBVは単純だ。終値が前の足より高ければその足の出来高を加算し、低ければ減算する。「上がったか下がったか」の二択。足の中で何が起きたかは考慮しない。 A/Dラインは足の内部を見る。終値がレンジ内のどこで閉じたかを−1〜+1の重みとして出来高に掛ける。同じ陽線でも、長い上ヒゲをつけてレンジ下半分で引けた足と、ヒゲなしで高値圏で引けた足では、A/Dラインへの影響が全く異なる。 具体例で考える。ある足が大きく窓を開けて下落し、前日終値より大幅に安く引けたとする。OBVはこの足の出来高を全額減算する。しかし、その足のレンジ内で見ると終値が高値に近い位置だった場合、A/Dラインは上昇する。窓開けの下落にもかかわらず、足の中では買い圧力が勝っていたことを示す。 まとめると、A/DラインはOBVより「ローソク足内部の攻防」を精密に反映する。ただしOBVの方がシンプルで直感的に解釈しやすいというメリットもある。どちらが優れているかではなく、見ているものが違う。 FXでA/Dラインを使う際の最大の注意点|ティックボリューム問題 ここが最も重要なセクションだ。A/DラインをFXで使うなら、この制約を必ず理解しておく必要がある。 A/Dラインは出来高データの「質」に依存する。株式市場では取引所が実際の売買金額(実出来高)を報告するため、A/Dラインの計算は正確だ。しかし、FXは分散型市場であり、全体の出来高データが存在しない。 MT4/MT5で表示される「Volume」はティックボリュームだ。これは「その時間足の中で価格が何回変動したか」を数えたものであり、実際の取引金額とは異なる。ティックボリュームと実出来高には一定の相関があるとする研究もあるが、完全には一致しない。 この制約がA/Dラインにどう影響するか。出来高の質が低い(実際の売買金額を反映していない)場合、MFMに掛け合わせるボリュームの精度が下がり、A/Dラインの信頼性も低下する。特にマイナー通貨ペアや流動性の低い時間帯では、ティックボリュームの歪みが大きくなる。 FXでA/Dラインの精度を高める方法: 第一に、EUR/USD、USD/JPY、GBP/USDなどメジャー通貨ペアで使う。流動性が高いほどティックボリュームと実出来高の相関が高い。 第二に、通貨先物(CMEのユーロ先物、円先物など)の出来高データを参照する。先物市場には取引所の実出来高が存在する。先物チャートのA/Dラインを見て、スポットFXのチャートに分析結果を適用する方法は、Marc Chaikin自身も推奨している。 第三に、A/Dラインの絶対値ではなく「方向」と「ダイバージェンス」に集中する。ティックボリュームの精度が低くても、A/Dラインの方向(上昇/下降)とダイバージェンス(価格との乖離)は相対的に信頼性が保たれる。 MT4・TradingViewでの表示方法 MT4/MT5の場合: 上部メニューから「挿入」→「インディケータ」→「ボリューム」→「Accumulation/Distribution」を選択。パラメーター設定はなく、色の変更のみ。チャート下部のサブウィンドウにA/Dラインが表示される。MT4/MT5ではA/Dは「ボリューム」カテゴリに分類されている。 →...
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Awesome Oscillator(オーサムオシレーター)の使い方|MACDの「兄弟」が持つ3つの武器
「MACDは使っているけど、もう少し早くモメンタムの変化を捉えたい。」 多くのFXトレーダーが感じるこの不満に、30年前に答えを出した人物がいる。アメリカの伝説的トレーダー、Bill Williams(ビル・ウィリアムズ) だ。 Williamsは著書『Trading Chaos(1995年)』で、既存のオシレーターに共通する弱点を指摘した。MACDを含むほとんどのオシレーターは終値をベースに計算される。しかし終値はローソク足が閉じた瞬間の一点にすぎず、その足の中で起きた売買攻防(ヒゲの長さ)を反映しない。 そこでWilliamsが開発したのがAwesome Oscillator(AO、オーサムオシレーター)だ。AOは終値ではなく、ローソク足の中央値((高値+安値)÷2)を使う。たったこの一点の違いが、ヒゲに現れる売買圧力の変化を拾い、MACDより「一歩早く」モメンタムの転換を示唆する。 AOはMT4/MT5、TradingViewのいずれにも標準搭載されており、パラメーター調整が一切不要。表示した瞬間から使える。この記事では、AOの仕組み、MACDとの具体的な違い、そしてAO固有の3大シグナル(ゼロラインクロス・ソーサー・ツインピークス)と、Bill Williamsの統合戦略であるAlligator併用法を解説する。 AOとは?|計算式で理解する「MACDの兄弟」 Awesome Oscillatorの計算式はシンプルだ。 AO = SMA(中央値, 5期間) − SMA(中央値, 34期間) ここで、中央値 =(高値 + 安値)÷ 2 5期間SMA(短期の移動平均)が34期間SMA(長期の移動平均)を上回ればAOはプラス(ゼロラインより上)、下回ればマイナス(ゼロラインより下)になる。つまり、短期のモメンタムが長期のモメンタムを上回っているかどうかをヒストグラムで視覚化する。 ヒストグラムの各バーには色がつく。前のバーより値が大きければ緑(上昇勢力が優勢)、小さければ赤(下落勢力が優勢)。この緑・赤の切り替わりがモメンタムの微細な変化を教えてくれる。 この構造はMACDと非常によく似ている。実際、AOはMACDの亜種と言ってよい。しかし2つの決定的な違いがあり、それがAO固有の「武器」を生み出している。 AOとMACDの違い|なぜ「中央値」と「SMA」なのか AOとMACDの違いを明確に理解しておくことが、AOを正しく使うための前提になる。 違い①:価格の基準(中央値 vs 終値) MACDは終値(Close)をベースに計算する。終値はその時間足が閉じた瞬間の価格であり、足の中で起きた値動きの「結果」だけを反映する。一方AOは中央値((高値+安値)÷2)を使う。中央値はその足の高値と安値の中間点であり、ヒゲの情報を含む。 これが実際にどう効くか。例えば、長い上ヒゲがついた陰線が出た場合を考える。終値は始値より下がっているので、MACDは「下落」の情報を受け取る。しかし中央値は高値と安値の平均なので、高値まで一度は買われたという情報も含む。つまりAOはMACDが見落とす「足の中の攻防」を拾える。 違い②:移動平均の種類(SMA vs EMA) MACDはEMA(指数平滑移動平均)を使い、直近の価格に大きなウェイトを置く。そのためMACDは価格変動に敏感に反応するが、ノイズも拾いやすい。AOはSMA(単純移動平均)を使い、全期間の価格を等しく扱う。AOのヒストグラムはMACDより「滑らか」で、短期的なノイズに振り回されにくい。 違い③:シグナルラインの有無 MACDにはシグナルライン(9期間EMA)があり、MACDラインとの交差でシグナルを出す。AOにはシグナルラインがない。その代わり、ヒストグラムの形状そのもの(ソーサー・ツインピークス)がシグナルとなる。 違い④:パラメーター調整 MACDには3つのパラメーター(短期EMA/長期EMA/シグナルEMA)があり、トレーダーが自由に調整できる。AOは5期間と34期間が固定で、調整できない(MT4/MT5の場合)。一見デメリットに思えるが、実はこれがメリットになる。全員が同じ設定で見ているため、分析者ごとの解釈のブレが少ない。 → MACDの詳細な使い方は「RSI・MACDの使い方」を参照。 MT4・TradingViewでの表示方法 MT4/MT5の場合: 上部メニューから「挿入」→「インディケータ」→「Bill Williams」→「Awesome Oscillator」を選択。パラメーター設定画面が出るが、調整項目は色の変更のみ。「OK」を押すとチャート下部にヒストグラムが表示される。MT4/MT5ではAOは「Bill Williams」カテゴリに分類されている点に注意(「オシレーター」カテゴリではない)。 → MT4を提供しているFX会社については「MT4が使えるFX会社ガイド」で紹介している。 TradingViewの場合: チャート上部の「インジケーター」ボタンをクリックし、「Awesome Oscillator」と検索。TradingView標準のAOインジケーターを選択する。TradingViewではBill Williams分類ではなく一般的なインジケーターとして検索可能。 AOの3大シグナル AOが出すシグナルは大きく分けて3つ。それぞれ用途が異なるため、どの場面で使うかを明確にしておく。 シグナル①:ゼロラインクロス...
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ZigZag(ジグザグ)インジケーターの使い方|チャートの「骨格」を見抜く分析補助ツール
ZigZagとは?|「分析補助ツール」であって「シグナルツール」ではない チャートを開いて最初にすべきことは何か。多くのトレーダーは「インジケーターを表示する」と答えるだろう。しかし、それよりも先にやるべきことがある。チャートの「骨格」を把握することだ。 骨格とは、どこが直近のスイングハイ(高値の山)で、どこがスイングロー(安値の谷)なのか。この構造がわからなければ、トレンドの方向も、サポート・レジスタンス(Supply and Demandゾーン)の位置も、エリオット波動のカウントも始まらない。 しかし、特に初心者にとって、チャート上の無数のローソク足からスイングポイントを正確に特定するのは意外と難しい。細かい上下動に惑わされて、本当に重要な高値・安値を見誤る。 ZigZag(ジグザグ)インジケーターは、この問題を解決する。チャートのノイズ(小さな値動き)をフィルタリングし、重要なスイングハイとスイングローだけを直線で結んで表示する。いわば、チャートのX線写真を撮るようなものだ。骨格だけを浮かび上がらせることで、相場の構造が一目で見える。 MT4/MT5、TradingViewのいずれにも標準搭載されており、追加インストールは不要。この記事では、ZigZagの仕組み、パラメーター設定、そして実戦での3つの使い方を解説する。 ZigZagインジケーターの最も重要な特徴を最初に明確にしておく。ZigZagは売買シグナルを出すインジケーターではない。RSIのように「買われすぎ/売られすぎ」を示すわけでも、移動平均線のようにゴールデンクロスを出すわけでもない。 ZigZagの役割は、チャート上の小さな値動きを無視し、一定以上の値幅を持つスイングの高値と安値だけを直線で結ぶことだ。これにより、チャートの複雑な上下動が「山と谷の連続」というシンプルな構造に変換される。 この「構造の可視化」が何の役に立つのか。主に3つの用途がある。ダウ理論に基づくトレンド判断(高値・安値が切り上がっているか切り下がっているか)、エリオット波動のカウント補助(波のカウントが格段に楽になる)、フィボナッチ・リトレースメントの起点・終点の特定(どのスイングを基準にフィボナッチを引くべきか明確になる)。 つまりZigZagは「分析の土台を整えるツール」であり、その上に他の手法を重ねることで初めてトレードに活きる。 ZigZagの仕組みとパラメーター|Depth・Deviation・Backstep ZigZagの動作原理はシンプルだ。「直前のスイングポイントから一定以上の値幅が動いたら、新しいスイングポイントを認識して線を引く」。この「一定以上」の基準を決めるのが3つのパラメーターだ。 Depth(深さ): スイングポイントを検出するために遡る最小バー数。デフォルトは12。値を大きくすると大きなスイングのみを表示し、小さくすると細かいスイングも拾う。 Deviation(偏差): 新しいスイングポイントを認識するために必要な最小の価格変動率。MT4のデフォルトは5(%ではなくポイント単位の場合もある)。TradingViewでは%指定が可能。この値が大きいほどノイズが除去され、小さいスイングが無視される。 Backstep(後退): 連続するスイングポイント間の最小バー数。デフォルトは3。直前のスイングポイントからこのバー数以内では新しいスイングポイントが認識されない。 FXでの推奨設定: FXは株式に比べてボラティリティが小さいため、Deviationは低めに設定する。日足ならDeviation 1〜3%が一般的。株式の日足では5〜10%が使われるので、そのまま適用するとFXではスイングがほとんど表示されない。スキャルピングではDepthを5〜8に下げて細かいスイングを拾い、スイングトレードでは12〜20に上げて大きな流れだけを見る。 → テクニカル分析全般の基礎は「FXチャート分析入門」で体系的に学べる。 MT4・TradingViewでの表示方法 MT4の場合: 上部メニューから「挿入」→「インディケータ」→「カスタム」→「ZigZag」を選択。パラメーター設定画面でDepth・Deviation・Backstepを調整して「OK」を押すと、チャート上にジグザグのラインが表示される。MT4ではZigZagは「カスタム」カテゴリに分類されているが、標準搭載なのでダウンロードは不要。 TradingViewの場合: チャート上部の「インジケーター」ボタンをクリックし、検索バーに「Zig Zag」と入力。TradingView標準のZig Zagインジケーターを選択すると表示される。TradingViewではDeviation(%)で感度を調整でき、直感的にわかりやすい。 リペイント(再描画)の正しい理解 ZigZagを使う上で必ず理解しておくべきことがある。ZigZagはリペイント(再描画)する。 リペイントとは、新しい価格データが入るとZigZagの最新のラインが引き直される現象だ。例えば、ZigZagが「ここがスイングハイだ」と一旦ラインを引いた後、さらに高値が更新されるとラインが上方に移動する。 ただし、確定済みの過去のスイングポイントは変わらない。変わるのは常に「最新の未確定ライン」だけだ。この特性を正しく理解していれば、ZigZagは十分に実用的なツールになる。 実践上のルールは明快で、ZigZagの最新ライン(まだ確定していないライン)でリアルタイムの売買判断をしてはいけない。確定済みのスイングポイントをベースにトレンド判断やフィボナッチの描画を行い、エントリー判断は他のインジケーターやプライスアクションで行う。これがZigZagの正しい使い方だ。 ZigZagの実戦手法3選 ZigZagは「分析の土台」として使い、その上に他の手法を重ねる。以下の3つは、それぞれ異なるアプローチで機能する。 手法①:ダウ理論に基づくトレンド判断 ダウ理論では、高値と安値が共に切り上がっていれば上昇トレンド、共に切り下がっていれば下降トレンドと定義する。しかし、ローソク足の細かい上下動の中から「どこが高値で、どこが安値か」を正確に判断するのは、経験を積まないと難しい。 ZigZagを表示すれば、スイングハイとスイングローが自動で特定される。あとはそれらが切り上がっているか切り下がっているかを確認するだけだ。 上昇トレンドなら、ZigZagの山が前回の山より高く(Higher High)、谷が前回の谷より高い(Higher Low)。この構造が続いている限りトレンドは健全と判断する。山が前回より低くなった(Lower High)、または谷が前回より低くなった(Lower Low)場合、トレンド転換の可能性がある。 損切りの位置もZigZagで明確になる。買いポジションなら直近のスイングロー(ZigZagの谷)の少し下に置く。このスイングローを割ったらトレンド構造が崩壊したことを意味するため、ポジションを手放す根拠になる。 → 損切りルールの詳細は「損切りルールの作り方」を参照。 手法②:フィボナッチ・リトレースメントとの併用 フィボナッチ・リトレースメントを引くには「起点(スイングロー)」と「終点(スイングハイ)」を決める必要がある。しかし、どのスイングポイントを基準にすべきか迷うことが多い。 ZigZagを表示すれば、フィボナッチの起点と終点が自動的に特定される。ZigZagが示す直近のスイングローからスイングハイ(上昇トレンドの場合)にフィボナッチ・リトレースメントを引く。38.2%、50%、61.8%のラインが押し目買いの候補ゾーンになる。 この手法のポイントは、ZigZagのDeviation設定を適切に調整すること。Deviationが小さすぎると細かいスイングまで拾ってしまい、フィボナッチを引く基準が定まらない。日足なら2〜3%程度に設定し、「意味のある」スイングだけを表示するのがコツだ。 手法③:エリオット波動のカウント補助 エリオット波動理論では、トレンド方向に5波(推進波)、逆方向に3波(修正波)が形成されるとする。しかし、チャート上でこの波をカウントするのは経験者でも難しい。ノイズに惑わされて波の数を数え間違えたり、どこから新しい波が始まるかで迷ったりする。 ZigZagを使うと、チャートが「山と谷の連なり」に単純化されるため、波のカウントが格段に楽になる。推進波の1-2-3-4-5と修正波のA-B-Cを、ZigZagのスイングポイントに当てはめて確認できる。 ここで重要なのは、ZigZagの設定を波のスケールに合わせること。大きな推進波をカウントしたいならDepthを大きくし、修正波の内部構造を見たいならDepthを小さくする。2つの異なる設定のZigZagを同時に表示して、大きな波と小さな波の関係を確認する方法も有効だ。 → 移動平均線を使ったトレンド確認は「移動平均線の見方と使い方」を参照。...
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DeMarker(デマーカー)の使い方|RSIが見逃す「価格の勢い」を捉えるオシレーター
RSIで「買われすぎ」と判断して売りエントリーしたのに、そこから更に上昇して損切りになった。こんな経験を持つFXトレーダーは多い。 RSIは終値だけで計算されるため、ローソク足のヒゲが示す「売買圧力の変化」を見落とすという構造的な弱点がある。終値は前回とほとんど同じでも、上ヒゲが伸びていれば「上値を試したが押し返された」という情報が含まれている。RSIはこの情報を拾えない。 この弱点を克服するために作られたのがDeMarker(デマーカー、DeM)だ。DeMarkerは終値ではなく高値と安値の変化を使って売買圧力を測定する。そのため、RSIでは検出しにくい「上値の重さ」「下値の堅さ」の変化を早期に捉えることができる。 しかもMT4/MT5に標準搭載されており、カスタムインジケーターのダウンロードは一切不要。すぐに使い始められる。 この記事では、DeMarkerの仕組み、RSIとの具体的な違い、MT4での設定方法、そして実践的なトレード手法を解説する。 DeMarkerとは?|開発者トム・デマークの思想 DeMarkerを開発したトーマス・R・デマーク(Thomas R. DeMark)は、ジョージ・ソロスやゴールドマン・サックスの投資顧問を務めた実績を持つアメリカのテクニカルアナリストだ。50年以上のキャリアで70以上のテクニカルツールを開発しており、FXの世界ではTDシーケンシャル(TD Sequential)の開発者としても知られている。 デマークがDeMarkerを開発した目的は、既存のオシレーターが抱える「遅延」の問題を最小化することだった。RSIやストキャスティクスといった一般的なオシレーターは「遅行指標」に分類されるが、DeMarkerは先行指標(Leading Indicator)として設計されている。つまり、トレンドの変化が起きた後に反応するのではなく、変化が起きる前にシグナルを出すことを目指している。 この「先行性」は、DeMarkerが終値ではなく高値・安値という「ローソク足の両端」を使う計算方法から生まれている。 DeMarkerの計算方法|高値と安値で「売買圧力」を測る DeMarkerの値は0〜1の範囲で表示される(一部のプラットフォームでは0〜100)。0.7以上が買われすぎ、0.3以下が売られすぎの目安だ。 計算の核心は、「当期の高値が前期の高値より高いか」「当期の安値が前期の安値より低いか」という比較にある。 まずDeMAX(上昇圧力)を求める。当期の高値が前期の高値より高ければ、その差をDeMAXとする。そうでなければDeMAXはゼロ。次にDeMIN(下降圧力)を求める。当期の安値が前期の安値より低ければ、その差をDeMINとする。そうでなければDeMINはゼロ。最後にそれぞれのN期間移動平均を取り、以下の式で算出する。 DeMarker = SMA(DeMAX, N) ÷ [SMA(DeMAX, N) + SMA(DeMIN, N)] この計算が意味するのは、「直近N期間のうち、高値が切り上がった幅の合計と、安値が切り下がった幅の合計を比べて、どちらの圧力が強いか」ということだ。高値の切り上げが多ければDeMarkerは1に近づき(買い圧力が強い)、安値の切り下げが多ければ0に近づく(売り圧力が強い)。 DeMarkerとRSIの決定的な違い DeMarkerとRSIは「0〜1(または0〜100)の範囲で買われすぎ・売られすぎを判断する」という点では同じだ。しかし、計算に使う価格データが根本的に異なる。 RSI:終値のみ。 RSIは「前日の終値と今日の終値の差」から上昇幅と下降幅を計算する。つまり、ローソク足の胴体部分しか見ていない。上ヒゲが長くても、終値が前日終値より低ければ「下落」として計算される。 DeMarker:高値と安値。 DeMarkerは高値と安値の変化から計算される。上ヒゲが伸びていれば(=高値が前期より高ければ)DeMAXが増え、DeMarkerが上昇する。つまり、終値が変わっていなくても「上を試す動き」をキャッチできる。 実践上の違い: この差が最も顕著に現れるのは「長い上ヒゲ(下ヒゲ)が出現した局面」だ。たとえば、上昇トレンドの終盤で上ヒゲの長いローソク足が連続する場合、DeMarkerは「買い圧力は続いているが上値で売り戻されている」という情報を早期にキャッチする。RSIが0.7に到達する前にDeMarkerが先に0.7に到達し、「買われすぎ」のシグナルを出すことがある。 → RSIの基本的な使い方は「RSI・MACDの使い方」で解説。 MT4でのDeMarkerの設定方法 DeMarkerはMT4/MT5に標準搭載されているため、インストール作業は不要だ。 表示手順: MT4の上部メニューから「挿入」→「インディケータ」→「オシレーター」→「DeMarker」をクリック。パラメーター設定画面が開くので、期間を設定して「OK」を押す。チャート下部のサブウィンドウにDeMarkerが表示される。 期間設定の目安: デフォルトは14期間。開発者のデマーク自身は13期間を推奨している。トレードスタイルに応じて調整する。スキャルピングの場合は7〜10が適切で、感度が上がりシグナルが早くなるがダマシも増える。デイトレードでは13〜14(デフォルト)がバランスがよい。スイングトレードなら20〜25に設定し、長期のトレンドの過熱感を判断する。 注意: デマークは元々日足以上の時間足での使用を前提に開発された。1時間足未満の短い時間足では信頼性が下がるため、H1(1時間足)以上での使用を推奨する。 → テクニカル分析全般の基礎は「FXチャート分析入門」で体系的に学べる。 DeMarkerの実践手法3選 DeMarkerは単体で使うこともできるが、他のインジケーターと組み合わせたほうが精度は上がる。以下の3つの手法は、それぞれ異なる相場環境で機能する。 手法①:0.7/0.3のクロスバック(レンジ相場向け) 最もシンプルな使い方だ。DeMarkerが0.7を超えた後、0.7を下回る瞬間に売りを検討する。逆に、0.3を下回った後、0.3を上回る瞬間に買いを検討する。 ポイントは「超えた瞬間ではなく、戻ってきた瞬間」でエントリーすること。0.7を超えた時点で売ると、強いトレンド中に逆行して損切りになりやすい。0.7から戻ってくる=買い圧力が実際に減退し始めた、と確認してからの方が精度が高い。 この手法はレンジ相場で最も機能する。明確なトレンドが出ている場合は、DeMarkerがオーバーシュートゾーン(0.7以上/0.3以下)に長時間張り付くため、クロスバックを待つ間に含み損が拡大するリスクがある。 手法②:ダイバージェンス(トレンド転換の検出) DeMarkerでダイバージェンスを検出する方法はRSIと同じ考え方だ。 弱気のダイバージェンスは、価格が高値を更新しているのにDeMarkerの山が前回より低い状態。上昇トレンドの勢いが内部的に弱まっていることを示す。強気のダイバージェンスは、価格が安値を更新しているのにDeMarkerの谷が前回より高い状態。下降トレンドの勢いが弱まっていることを示す。 DeMarkerは高値・安値ベースで計算されるため、RSIよりもダイバージェンスの検出が早い傾向がある。特に「価格の高値は更新しているが、上ヒゲが短くなっている」ような微妙な変化をDeMarkerは敏感に拾う。 → ダイバージェンスの概念については「RSI・MACDの使い方」のダイバージェンスセクションも参照。...