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勝率50%・損益率1.5のトレーダーが、1回のトレードに資金の10%を張ると、破産確率は約3.7%。同じ成績のまま、張る割合を2%に下げるだけで、0.01%未満まで落ちる。
——成績を1ミリも変えずに、破産だけが遠ざかる。これがバルサラの破産確率が教えてくれる、たったひとつの重要な事実だ。
この記事では、表の貼り付けで終わる解説にはしない。計算式の中身、3つのレバーの優先順位、そして「自分の数字」で確かめる方法まで通して書く。

バルサラの破産確率とは
バルサラの破産確率とは、一定の条件でトレードを続けた場合に、資金がゼロになる計算上の確率のこと。Nauzer J. Balsara が著書『Money Management Strategies for Futures Traders』(1992)で示した。
入力は3つだけ。
- 勝率——全トレードのうち利益で終えた割合。10回中5回勝ちなら50%
- 損益率——勝ったときの平均利益 ÷ 負けたときの平均損失。1.5なら「勝ちは負けの1.5倍」(ペイオフレシオ、リスクリワードレシオと同じ意味)
- 1回のリスク——1回のトレードで失ってよい資金の割合。2%なら100万円の口座で2万円まで
この3つを入れると「その条件で続けた先にある破産の確率」がひとつ返ってくる。占いではない。確率論の帰結だ。
計算式——多くの解説が逃げる部分
ほとんどの解説記事は表を貼って終わる。だが中身は難しくない。2段階しかない。
ステップ1: 次の方程式を満たす X(0と1の間の値)を探す。
X = p × X^(1+k) + (1 − p) p = 勝率、k = 損益率
ステップ2: 見つけた X を、リスク割合 f で累乗する。
破産確率 Q = X^(1/f) 例: f = 2% なら Q = X の50乗
ここで大事な性質がひとつ。期待値がマイナス(p×(1+k) ≤ 1)なら、破産確率は必ず100%になる。勝率40%・損益率1.0のような条件は、リスクをどれだけ下げても計算上の破産を回避できない。減るスピードが変わるだけだ。つまりこの式は「張り方の問題」と「手法そのものの問題」を切り分けてくれる。
そしてステップ2が、この理論の核心をそのまま見せてくれる。X は1未満の数なので、累乗の回数(= 1/f)が増えるほど、結果は急激に小さくなる。リスク10%なら10乗、2%なら50乗。破産確率が「リスクを下げると桁で落ちる」のは、この指数の構造そのものだ。
表の見方は3行でいい
バルサラの表は勝率×損益率のマス目に確率を並べたものだが、実務で必要な判断基準は3行に収まる。
- 🟢 1%以下——安全圏。この条件は維持していい
- 🟡 1〜5%——注意。レバーのどれかを見直す
- 🔴 5%超——危険水準。今の張り方を続ける理由がない
代表値をひとつ覚えておくと感覚がつかめる。勝率60%・損益率1.0・リスク10%で、破産確率は約1.73%。「勝率6割あれば安泰」と思っていた人には、少し嫌な数字のはずだ。
3つのレバーには優先順位がある
破産確率を下げる方法は、定義上3つしかない。勝率を上げる、損益率を上げる、リスクを下げる。ここで多くの解説が「3つとも大事」と並列に書くが、実務では明確に順位がつく。
最速のレバーは「1回のリスク」だ。
理由は単純で、勝率と損益率は明日から変えられないからだ。どちらも手法と経験の産物で、改善には数百トレードの検証がいる。一方、ロットは今日の次のトレードから変えられる。しかも上で見たとおり、リスクは指数の位置にいるので効き方が桁違いに大きい。
冒頭の例をもう一度。勝率50%・損益率1.5のまま、リスクを10%→2%にすると、破産確率は3.7%→0.01%未満。手法を何も変えずに、破産だけがほぼ消える。
連敗は「事故」ではなく「予定」
2%ルールの意味は、連敗を想定に入れたときにはっきりする。
勝率50%のトレーダーが1000回トレードすると、どこかで10連敗を経験する確率は6割を超える。10連敗は事故ではない。数をこなせばほぼ確実に来る「予定」だ。
そのとき口座はどうなるか。
- リスク2%で10連敗 → 資金は約82%残る(−18%)
- リスク10%で10連敗 → 資金は約35%しか残らない(−65%)
−18%は取り返せる。−65%は、元に戻すだけに+186%が必要で、多くの人はここで退場するか、取り返そうとしてさらに張りを大きくする。破産確率の差は、この「予定された連敗」を生き延びられるかどうかの差そのものだ。
このモデルの限界も知っておく
正直に書いておくと、バルサラのモデルには前提がある。
- 固定額リスクが前提。実際に毎回「残高の2%」と定率で張ると、資金は漸近的にしか減らないため、現実の破産はモデルの数字より起きにくい。つまりこの確率は保守側(悪め)の見積もりだ
- 入力は過去の成績。勝率も損益率も「これまでの数字」であって、将来を保証しない
- スプレッドやスリッページ、トレードごとの相関は考慮されていない
それでも使う価値があるのは、「自分の張り方が数学的に持続可能か」を1つの数字で答えてくれる道具が、他にほぼ無いからだ。
自分の数字で確かめる
ここまで読んで、自分の勝率・損益率・リスクならどうなのかが気になったなら、それが正しい反応だ。一般論の3.7%に意味はない。意味があるのは自分の数字だけだ。
当ブログが運営するアプリ「FX AI ラボ」の資金管理画面に、この計算機を実装した。スライダーを3本動かすと破産確率が即時に再計算され、安全圏に戻すには「1回のリスクを何%にすればいいか」の具体値まで提示する。表を眺めるのではなく、自分の条件で what-if を試せる。無料で使える。
まとめ
- バルサラの破産確率は、勝率・損益率・1回のリスクの3つから「資金がゼロになる計算上の確率」を出す道具
- 判断基準は3行——1%以下は安全圏、1〜5%は注意、5%超は危険水準
- 最速のレバーは「1回のリスク」。手法を変えずに、今日から破産確率を桁で下げられる
- 10連敗は勝率50%なら「予定」。それを生き延びる張り方かどうかを、先に数字で確かめておく
関連記事: ナンピンとは?FXで「善」になる条件と「悪」になる理由 / プロスペクト理論とFX|「利小損大」を生む3つの心理バイアス
参考: Nauzer J. Balsara『Money Management Strategies for Futures Traders』(1992) / OANDA Lab / Fintokei
※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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