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FXのチャート分析で「高値切り上げ・安値切り下げなら上昇トレンド」「高値切り下げ・安値切り上げなら下降トレンド」と教わる。ダウ理論の基本だ。しかし実際にチャートを前にすると、「そもそもどこを高値・安値と定義するのか?」という根本的な問いにぶつかる。
人によって高値安値の認識が違えば、トレンド判断も変わる。トレンドラインの引き方も変わる。エリオット波動のカウントも変わる。この主観のブレを排除し、ローソク足5本の構造から高値安値を機械的に定義するのが、Fractals(フラクタル)インジケーターだ。
開発者はアメリカの伝説的トレーダーBill Williams(ビル・ウィリアムズ)。著書『Trading Chaos(1995年)』で発表したフラクタルは、Awesome Oscillator、Alligator(アリゲーター)とともにWilliamsの5次元分析システムの根幹を成す。MT4/MT5に標準搭載されており、「Bill Williams」カテゴリから即座に使える。
本記事では、フラクタルの仕組み、Bill Williamsの正統的な活用ルール、Alligatorとの組み合わせ、6つの実践的活用法、ダマシの見分け方、そしてZigZagとの違いまでを体系的に解説する。
Bill Williamsの「5次元分析」におけるフラクタルの位置づけ
フラクタルを理解するには、Bill Williamsの市場分析体系を俯瞰するのが近道だ。Williamsは市場を5つの「次元(Dimension)」で分析することを提唱した。
| 次元 | 名称 | 指標 | 分析対象 |
|---|---|---|---|
| 第1次元 | フラクタル(空間) | Fractals | 市場構造の骨格——高値安値の定義 |
| 第2次元 | 推進力 | Awesome Oscillator | モメンタムの方向と強さ |
| 第3次元 | 加速/減速 | Accelerator Oscillator (AC) | モメンタムの変化率 |
| 第4次元 | ゾーン | ゾーン分析 | エントリーの確信度 |
| 第5次元 | バランスライン | — | 価格の均衡水準 |
フラクタルは第1次元——つまりWilliamsシステムの最も根本的な層に位置する。価格構造の「骨格」を定義するのがフラクタルの役割であり、この骨格の上にモメンタム(AO)や加速度(AC)の分析が積み上がる構造だ。AvaTrade の解説でも、フラクタルはWilliamsの5指標の中で「価格の天井と底を検出するツール」として基盤的な位置づけにあると紹介されている。
つまりフラクタルは単なる「矢印を出すインジケーター」ではなく、市場分析の第一歩=構造認識ツールとして設計されている。この視点を持つことで、フラクタルの使い方が根本的に変わる。
フラクタルの基本構造——5本のローソク足の定義
Fractal Up(弱気フラクタル / 上向き矢印 ▲)
5本のローソク足の中で、3本目(中央)の高値が最も高いパターン。中央のローソク足の上に▲マークが表示される。この地点が局所的な高値(抵抗帯の候補)として定義される。
条件: High[3] > High[1], High[2], High[4], High[5]
Fractal Down(強気フラクタル / 下向き矢印 ▼)
5本のローソク足の中で、3本目(中央)の安値が最も低いパターン。中央のローソク足の下に▼マークが表示される。この地点が局所的な安値(支持帯の候補)として定義される。
条件: Low[3] < Low[1], Low[2], Low[4], Low[5]
重要な特性:遅行性(2本のラグ)
フラクタルのマークが表示されるのは、5本目のローソク足が確定した瞬間だ。つまり中央のローソク足から見て2本後にようやく確認されるため、常に2本分の遅延がある。
MetaTrader5の公式ヘルプも「フラクタルの矢印は表示後にリペイント(描き直し)されない」と明記している。遅行するが確定後は変わらない——この特性が、フラクタルの信頼性の根拠であり、同時にエントリーシグナルとしては遅すぎる理由でもある。
結論: フラクタルは「ここが高値(安値)だった」と事後的に確定させるツールであり、「ここで買え(売れ)」というリアルタイムのシグナルではない。この認識が正しい使い方の出発点になる。
同一高値・安値が並ぶ場合の扱い
5本のうち2本以上が同じ高値(安値)を持つ場合がある。この場合、最後のバーが基準となる。例えば2本目と3本目が同じ最高値なら、3本目がフラクタルのマークが付く位置になる。
MT4/MT5での表示方法
MT4/MT5ともに標準搭載。パラメータ調整は不要。
- 上部メニュー「挿入」→「インディケータ」→「Bill Williams」→「Fractals」を選択
- 設定画面が表示されるが、変更項目は矢印の色のみ
- 「OK」でチャート上に▲▼マークが表示される
MT4でテクニカル分析を行うなら、MT4対応のFX会社があると便利だ。MT4対応FX会社の比較はこちら。
フラクタルの6つの活用法
フラクタルの用途は「基本用途」と「応用手法」の2階層に分かれる。
【基本用途①】高値安値の客観的な定義
フラクタルの最も根本的な価値は、高値安値を機械的に定義することだ。
「ダウ理論で高値切り上げを確認したい」「エリオット波動の推進波をカウントしたい」「サイクル理論でサイクルの頂点と底を見つけたい」——いずれの場合も出発点は高値安値の特定である。フラクタルを使えば、トレーダーの主観に依存せず同じ結果が得られる。
チャートにフラクタルを表示させた状態で高値安値を繋ぐと、ダウ理論の「高値切り上げ・安値切り上げ → 上昇トレンド」が視覚的に確認できる。フラクタルの高値が段階的に切り上がり、かつフラクタルの安値も切り上がっていれば、上昇トレンドは構造的に健全だと判断できる。
【基本用途②】サポート・レジスタンスラインの生成
フラクタルの▲マーク(高値)はレジスタンスライン候補、▼マーク(安値)はサポートライン候補として機能する。
同じ水準に複数のフラクタルが集中している場合、そのゾーンは特に強いサポート・レジスタンスとなる。価格がフラクタルのレジスタンスを上抜けばブレイクアウト、跳ね返されれば反転——という判断の基準になる。
旧記事で紹介した「Support and Resistance」カスタムインジケーターは、実はフラクタルの高値安値を自動的にラインとして可視化するツールだ。フラクタルが生成するサポレジの客観性がそのまま活かされている。
【基本用途③】トレンドラインの基点
トレンドラインを引くとき「どの高値同士・安値同士を結ぶか」で迷うことは多い。フラクタルの▲マーク同士、▼マーク同士を結べば、客観的なトレンドラインが引ける。
チャネルラインを引く際も、まずフラクタルの安値を結んでトレンドラインを引き、それに平行なチャネルラインを上方に引く——という手順で、主観を最小化できる。
【応用手法④】フラクタルブレイクアウト(フラクタルスタート→フラクタルシグナル)
フラクタルを使った最も実践的なトレード手法がフラクタルブレイクアウトだ。
メカニズム:
- フラクタルスタート: 最初のフラクタル(例えばFractal Up)が形成される
- フラクタルシグナル: その後、反対側のフラクタル(Fractal Down)が形成されると、最初のFractal Upが「フラクタルシグナル」に昇格する
- ブレイクアウト: 価格がフラクタルシグナルの高値を上方にブレイクしたら、買いエントリー
逆方向(売り)も同様。最初にFractal Downが形成され、その後Fractal Upが形成されたら、最初のFractal Downがフラクタルシグナルに昇格。価格がその安値を下方にブレイクしたら売りエントリー。
ストップロス: 直近の反対側フラクタルに設定する。買いエントリーなら直近のFractal Down(安値)の数pips下。FXSSIの解説でも「ストップロスは直近2つの反対側フラクタルのうち遠い方に設定する」と推奨されている。
利確: 以下のいずれか。
- 反対方向のフラクタルが新たに形成された時点
- 価格がAlligatorの歯(赤線)を反対方向にブレイクして確定した時点
- リスクリワード比1:2に到達した時点
【応用手法⑤】Fibonacci併用——フラクタル間のリトレースメント
フラクタルの高値と安値の区間にフィボナッチリトレースメントを適用する手法。
FXSSIは「フラクタルの高値と安値の間がまさにフィボナッチグリッドを引くべき区間」と解説している。forex-central.netも「フラクタルとフィボナッチを併用すると、どのリトレースメントレベルをトレードすべきかの選択肢が絞れる」と指摘する。
具体的な手順:
- 上昇トレンド中に、直近のFractal Down(安値)からFractal Up(高値)にフィボナッチリトレースメントを引く
- 価格が押し目で38.2%〜61.8%のフィボナッチレベルに到達
- そのレベルで新たなFractal Downが形成されたら、押し目買いエントリー
フィボナッチレベルへの到達だけでは「そこで反転するか分からない」が、フラクタルの形成は「実際にそこで反転が始まった構造的な証拠」になる。この二重確認が精度を上げるポイントだ。
【応用手法⑥】トレイリングストップ——フラクタルを追尾基準に
ポジション保有中に、新しいフラクタルが形成されるたびにストップロスを追従させる手法。
買いポジションの場合:
- 新しいFractal Down(安値)が形成されるたびに、ストップロスをその安値の数pips下に移動
- フラクタルの安値が切り上がり続ける限り、ストップロスも自動的に切り上がる
- トレンドが反転してフラクタルの安値を割り込めば、ストップに掛かって自動決済
メリット: 「いつ利確するか」という主観的な判断を排除し、トレンドが続く限りポジションを保有できる。ストップロスの設定方法はこちら。
Alligator + Fractals——Bill Williamsの正統的フィルタリング
フラクタルの最大の課題は「マークが多すぎる」ことだ。チャートを見れば分かるが、至る所に▲▼マークが表示され、全てに反応するとダマシだらけになる。
Bill Williams自身がこの問題に対して示した解答が、Alligator(アリゲーター)インジケーターによるフィルタリングだ。Awesome Oscillatorの記事でも触れたが、AlligatorはWilliamsシステムの「方向確認ツール」であり、3本の平滑移動平均線で構成される。
- Jaw(顎 / 青線): 13期間を8本先にシフト
- Teeth(歯 / 赤線): 8期間を5本先にシフト
- Lips(唇 / 緑線): 5期間を3本先にシフト
Bill Williamsの正統ルール(4条件)
MetaTrader5の公式ヘルプ、forex-central.net、DewinForex.comの解説を総合すると、Williamsが定めた正統ルールは以下の4条件だ。
条件①: 買いフラクタル(Fractal Up ▲)がAlligatorの歯(Teeth / 赤線)より上にある場合のみ、買いシグナルとして有効。
条件②: 売りフラクタル(Fractal Down ▼)がAlligatorの歯(Teeth / 赤線)より下にある場合のみ、売りシグナルとして有効。
条件③: 歯の内側(歯より下の買いフラクタル、歯より上の売りフラクタル)は全て無視する。
条件④(最優先ルール): 最初のフラクタル(買いまたは売り)がAlligatorの歯の外側に形成されるまで、他のいかなる指標のシグナルにも従わない。
条件④がWilliamsシステムの核心だ。Alligatorが「市場がトレンド状態にあるか」を判定し、フラクタルがそのトレンド内で「ブレイクすべきレベル」を定義する。この2つが揃って初めてエントリーに進む。
エントリーの実践フロー
- Alligatorの3線を確認: 3線が広がり、同じ方向に進んでいる=トレンド発生中(ワニが口を開けている)。3線が絡み合っている=レンジ(ワニが眠っている)→ トレードしない。
- フラクタルの位置を確認: Alligatorの歯(赤線)の上にFractal Upがあるか? 歯の下にFractal Downがあるか?
- BuyStop / SellStop注文を設定:
- 買い:Fractal Upの高値の数pips上にBuyStop注文
- 売り:Fractal Downの安値の数pips下にSellStop注文
- ストップロス: 直近の反対側フラクタル、またはAlligatorの歯(赤線)の反対側に設定。DewinForex.comは「直近2つの反対側フラクタルのうち、遠い方に設定する」ことを推奨。
- 利確/手仕舞い: Alligatorの歯(赤線)を価格が反対方向に終値でブレイク。または新しい反対方向のフラクタルシグナルが出現。
信頼度の低いフラクタル——3つのダマシパターン
全てのフラクタルが等しく有効なわけではない。以下の条件に該当するフラクタルは信頼度が低く、エントリーの根拠としては避けた方がよい。
①中央のローソク足の実体が極端に小さい
中央のローソク足が十字線(Doji)に近い、あるいは極端に実体が小さい場合、そのフラクタルは「本当の転換」ではなく「一時的な勢いの停滞」にすぎない可能性が高い。実体のしっかりしたローソク足が中央にあるフラクタルを優先する。
②出来高(Tick Volume)が極端に少ない時間帯
ロンドン市場・NY市場がクローズした深夜帯や、主要経済指標の直前で市場が様子見の時間帯に形成されたフラクタルは、薄商いの中の偶然的なパターンであることが多い。出来高を確認し、活発な時間帯のフラクタルを優先する。
③Alligatorの3線が絡み合っている(レンジ相場)
Alligatorが「眠っている」状態でのフラクタルは、レンジ内の小さな上下動に過ぎない。Alligatorが「口を開けている」——すなわちトレンドが発生している状態のフラクタルのみを有効とする。これはBill Williamsの正統ルールそのものだが、実際のチャートでは意外に多くのトレーダーがレンジ中のフラクタルにも反応してしまう。
フラクタル vs ZigZag——どう使い分ける?
高値安値をチャートに表示するという点で、フラクタルはZigZagインジケーターと比較されることが多い。両者の違いを整理する。
| 比較項目 | フラクタル | ZigZag |
|---|---|---|
| 判定ロジック | 5本のローソク足の中央が最高/最安 | 前の高値/安値から一定割合(%)以上の変動 |
| パラメータ依存度 | なし(固定ルール) | 高い(Depth, Deviation, Backstepの3設定) |
| マーク数 | 多い(小さなスイングにも反応) | 少ない(大きな波のみ) |
| リペイント | しない(5本目確定後は不変) | する(新高値/新安値で描き直される) |
| 遅延 | 2本 | パラメータ次第 |
| 適した用途 | サポレジ定義、ブレイクアウト基準、トレイリングストップ | エリオット波動カウント、大局のスイング把握 |
使い分けの指針:
- フラクタル向き: 細かい高値安値まで客観的に定義したい場合。サポレジの根拠にしたい場合。トレイリングストップの移動基準にしたい場合。
- ZigZag向き: チャートのノイズを排除して大きな波だけを可視化したい場合。エリオット波動のカウント補助に使いたい場合。
両者は排他的ではなく、フラクタルで細かい構造を把握し、ZigZagで大局のスイングを確認するという併用が効果的だ。旧記事でも触れたように、エリオット波動の基点としてフラクタルのマーク位置とZigZagのスイングポイントが合致する箇所は、特に信頼度の高い波動カウントの根拠になる。
フラクタルと他のインジケーターの関係
ボリンジャーバンドとの併用
ボリンジャーバンドの±3σバンドに価格が到達し、かつその地点でフラクタルが形成された場合、統計的な異常値 + 構造的な転換シグナルの二重確認となり、逆張りの根拠が強まる。レンジ相場限定の手法だが、スクイーズからのブレイクアウト初動をフラクタルブレイクで確認する使い方も考えられる。
RSI/MACDとの併用
RSIが30以下の売られすぎ圏で、かつFractal Down(安値)が形成された場合、反転の確度が高まる。MACDのダイバージェンス(価格は安値更新だがMACDは切り上げ)とフラクタルの安値形成が重なるパターンも強力な反転シグナルだ。
ブロードニングフォーメーションとの関係
ブロードニングフォーメーションの特徴は「高値が切り上がり、安値が切り下がる」拡大三角形だ。フラクタルを表示させると、この拡大パターンが客観的に見える。フラクタルの高値が段階的に切り上がり、フラクタルの安値も段階的に切り下がっている=ブロードニングの初期段階と判断できる。
注意点とまとめ
フラクタルは「分析の起点」であってゴールではない
Bill Williamsはフラクタルを5次元分析の「第1次元」に置いた。第1次元は出発点であり、そこから第2次元(AO)、第3次元(AC)と分析を積み上げて初めてトレード判断に至る。フラクタル単独でのエントリーは、Williamsのシステムの本来の使い方ではない。
全時間足で機能する
フラクタルの定義は「5本のローソク足」のみに依存するため、1分足から月足まで全ての時間足で機能する。ただし短い時間足ほどマーク数が増え、ノイズも増える。推奨はH1以上。特にH4〜Dailyではフラクタルの形成が重要なスイングポイントと一致する確率が高い。
「500トレード以上で効果を発揮する」
FXSSIはBill Williamsの見解として「フラクタルを含むトレーディングシステムは500回以上のトレードで統計的に有効な結果を出す」と紹介している。短期的に3〜5回の結果で判断するのではなく、十分なサンプル数で検証することが重要だ。まずはデモトレードで100回以上の検証を行い、自分のスタイルに合うかを確認してほしい。
まとめ
フラクタルの本質は「高値安値の客観的な自動定義ツール」だ。
- 基本用途: 高値安値の定義、サポレジ生成、トレンドラインの基点
- 応用手法: フラクタルブレイクアウト、Fibonacci併用、トレイリングストップ
- 正統な使い方: Alligator(歯の外側のフラクタルのみ有効)でフィルタリング
- 弱点: マークが多すぎる(Alligatorで解決)、2本の遅延(構造認識には問題なし)
- 使い分け: 細かい構造把握にはフラクタル、大局のスイング把握にはZigZag
「どこが高値でどこが安値か」——この問いへの客観的な答えを持つことが、全てのテクニカル分析の精度を底上げする。フラクタルはその基盤ツールだ。