線形回帰(LRI)の使い方|移動平均線より速い”次世代トレンドライン”をFXで活用する方法

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移動平均線を使っていて「トレンドが変わったのにシグナルが遅い」と感じたことはないだろうか。EMA(指数平滑移動平均線)でも、ゴールデンクロスが出た頃にはすでに価格が相当動いた後——というのはFXトレーダーの共通体験だ。

この「遅延(ラグ)」問題に対して、統計学のアプローチで解を示すのが線形回帰インジケーター(LRI:Linear Regression Indicator)である。LRIは過去n期間の価格データに最小二乗法で「最もフィットする直線」を求め、その直線の最新端点を各バーに順次プロットする。移動平均線が「過去の平均」を描くのに対し、LRIは「回帰直線の到達点」を描くため、価格変動への反応が速い。

Fidelityは線形回帰インジケーターについて「移動平均線に似た解釈だが、過去の平均ではなく回帰直線のエンドポイントをプロットするため、より反応が速い」と評している。

本記事では、LRIの数学的な仕組み、移動平均線・TSF(Time Series Forecast)との違い、最適な期間設定、FXでの4つのトレード手法を体系的に解説する。

LRIの計算原理——「最適な直線」を引く最小二乗法

直感的な理解

最小二乗法とは「データ全体に最もフィットする1本の直線を見つける方法」だ。

日常の例で考えてみよう。「気温が上がるとアイスクリームの売上は増える」という関係がある。10日間の気温と売上のデータをグラフに打点し、全ての点との距離が最小になるよう1本の直線を引く。これが最小二乗法で求めた回帰直線であり、この直線を使えば「明日の気温が32度なら、売上はおよそ○個」と予測できる。

FXでは「時間(x軸)」と「価格(y軸)」の関係に回帰直線を引く。LRIは指定した期間(例えば20本のバー)でこの直線を計算し、その直線の最新端の値を「今のバーのLRI値」としてチャートにプロットする。新しいバーが追加されるたびに最も古いバーが外れ、直線が再計算される。このローリング計算により、LRIはチャート上に動的なラインを描く。

数式(参考)

LRIの基盤となる回帰直線の方程式は以下の通り。

y = a + bx

  • y = 予測される価格(終値)
  • x = 期間内の位置(1, 2, 3, … n)
  • b = 傾き = (nΣxy − ΣxΣy) / (nΣx² − (Σx)²)
  • a = 切片 = (Σy − bΣx) / n
  • n = 期間の総数

この式で求まるのは「直線全体」だが、LRIがプロットするのはx = n(最新バー)のときのy値、すなわち回帰直線の右端だけである。ここがSMA(全期間の単純平均)やEMA(直近に重み付けした平均)との根本的な違いだ。

LRIと移動平均線の違い——なぜLRIは「速い」のか

ラグ(遅延)の原因

移動平均線のラグは「過去の全データを均等(SMA)または加重(EMA)で平均する」ことに起因する。仮に20期間SMAを使う場合、今日の値は「過去20日分の終値の平均」であるため、20日前の古い値に引きずられる。EMAは直近を重視するが、それでも平均計算の枠組みからは逃れられない。

一方LRIは「最適な直線の最新端点」をプロットする。回帰直線は全データの傾向を反映しつつも、その傾きを考慮して最新地点の「あるべき値」を算出する。価格が上昇基調にあるとき、回帰直線の端点は平均値よりも高い位置に来る。これがLRIの反応速度の本質である。

TradingPediaは「線形回帰インジケーターは実質的に明日の価格を今日の時点でプロットしている」と解説している。

同期間(20期間)での比較

比較項目 SMA (20) EMA (20) LRI (20)
計算方式 n期間の算術平均 直近に指数加重した平均 最小二乗法の回帰直線端点
価格追従 最も遅い SMAより速い EMAより速い
トレンド転換の検知 最も遅い(数本の遅延) SMAより早い EMAよりさらに早い
ダマシの頻度 少ない(鈍いため) 中程度 やや多い(敏感なため)
レンジ相場での挙動 安定 やや不安定 最も不安定(頻繁に上下)
適した用途 長期トレンド確認 汎用 短期トレンド追従・転換検知

ポイント: LRIはトレンド相場で真価を発揮する一方、レンジ相場ではEMAより頻繁にシグナルが出てダマシに遭いやすい。「LRIはトレンド相場の武器、レンジ相場では補助指標と組み合わせる」が原則だ。

3つの線形回帰系指標——LRI・TSF・Linear Regression Slope

線形回帰を基盤にした指標は実はLRIだけではない。TSF(Time Series Forecast)とLinear Regression Slope(LR Slope)を合わせた3指標を理解すると、線形回帰の活用幅が格段に広がる。

① LRI(Linear Regression Indicator)

回帰直線の最新バー上のy値(端点)をプロットする。「現在の回帰直線がここにある」という事実を示す。

② TSF(Time Series Forecast)

LRIの値に回帰直線の傾き(スロープ)を1バー分加算した値をプロットする。つまり「回帰直線を1バー先に延長した位置」を予測値として表示する。TSFはLRIよりもやや先行する性質があり、トレンドの初動を捉えるのに有利だが、その分オーバーシュート(行き過ぎ)も起きやすい。

LRIとTSFの関係式: TSF = LRI + Slope × 1

③ Linear Regression Slope(LR Slope)

回帰直線の傾きそのものを数値化し、サブウインドウに表示する指標。傾きが正ならば上昇トレンド、負ならば下降トレンド。ゼロラインとのクロスがトレンド転換シグナルになる。

LR Slopeの特筆すべき点は、正規化(Normalization)すれば異なる通貨ペア間のトレンド強度を比較できることだ。通常の価格指標はUSD/JPYの「150円」とEUR/USDの「1.08」では直接比較できないが、LR Slopeを正規化すれば定量比較が可能になる。

指標 プロット値 描画位置 特徴
LRI 回帰直線の端点 メインチャート上 価格追従が速い動的トレンドライン
TSF LRI + 傾き×1 メインチャート上 LRIより先行、予測的
LR Slope 回帰直線の傾き サブウインドウ トレンド方向+強度を数値化

実用上のヒント: LRIとTSFのクロスはトレンド転換シグナルとして使える。TSFがLRIを上方に突き抜けると上昇モメンタムの加速、下方に抜けると減速を示唆する。

LRIと線形回帰チャンネルの違い

名前が似ているため混同されやすいが、LRI(インジケーター)と線形回帰チャンネル(MT4描画ツール)は全くの別物だ。チャネルライン記事で5種類のチャネルツールのひとつとして解説した線形回帰チャンネルとの違いを明確にする。

比較項目 LRI(インジケーター) 線形回帰チャンネル(MT4描画ツール)
種別 カスタムインジケーター MT4標準搭載の描画ツール
更新 動的(新バーごとに自動再計算) 静的(手動で範囲を指定)
表示 1本のライン(色変化あり) 中央線+上下2本の計3本ライン
主な用途 トレンド方向の判定・エントリーシグナル チャネル内の反発・ブレイクアウト
チャネル幅 なし(ラインのみ) 回帰直線からの最大偏差で決定

LRIで現在のトレンド方向を確認しながら、線形回帰チャンネルでチャネルの上限・下限を把握するという併用が効果的だ。

LRIのパラメータ設定ガイド

MT4へのインストール

LRIはMT4の標準テクニカル指標には搭載されていない。カスタムインジケーターとしてインストールする必要がある。

  1. ダウンロードした.mq4または.ex4ファイルを用意
  2. MT4を起動し、「ファイル」→「データフォルダを開く」
  3. 「MQL4」→「Indicators」フォルダにファイルを配置
  4. MT4を再起動(または「ナビゲーター」ウインドウで右クリック→「更新」)
  5. 「ナビゲーター」→「インディケータ」から「LRI」をチャートにドラッグ

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期間設定の目安

トレードスタイル 推奨期間 推奨時間足 特徴
スキャルピング 15〜30 M5〜M15 非常に敏感、ダマシ多い。必ず補助指標を併用
デイトレード 20〜50 M15〜H1 バランス型。期間20がスタンダード
スイングトレード 50〜100 H1〜H4 安定したシグナル。中期トレンドの把握に最適
ポジショントレード 100〜300 H4〜Daily 大きなトレンドのみ追従。シグナル数は少ない

基本の考え方: トレードする時間足のバー本数で考える。H4で2週間分のデータを見たいなら、1日6本 × 10営業日 = 60本 → 期間60が目安。自分が見たい「過去の期間」をバー本数に換算してLRIの期間に設定するのがシンプルかつ合理的だ。

色変化の設定

多くのLRIカスタムインジケーターは、トレンド方向に応じてラインの色が変化する機能を持つ。

  • 上昇色(例:Lime / 緑): LRIが上向きに推移 → 上昇トレンド
  • 下降色(例:Magenta / 赤紫): LRIが下向きに推移 → 下降トレンド
  • 中立色(例:Yellow / 黄): LRIの勢いが弱まっている → トレンドの減衰・レンジ移行

FXにおけるLRIの4つのトレード手法

手法①:LRI色変化トレード(基本)

LRIの色変化とローソク足の位置関係でエントリーする、最もシンプルな手法。

ロングエントリーの条件:

  1. 価格の終値がLRIを下から上にクロス
  2. LRIの色が上昇色(Lime)に変化
  3. → ロングエントリー

ショートエントリーの条件:

  1. 価格の終値がLRIを上から下にクロス
  2. LRIの色が下降色(Magenta)に変化
  3. → ショートエントリー

クローズ(利益確定): LRIの色が中立色(Yellow)に変化 → ポジション決済

注意点: 「終値がLRIを抜け、かつ色が変わった」の2条件を同時に満たすことが重要。ヒゲだけの一時的なクロスや、色が変わらないクロスはダマシの可能性が高い。

推奨: 期間20、H1〜H4時間足。デモトレードで検証してから実践に移ること。

手法②:デュアルLRIクロス(応用)

移動平均線の「ゴールデンクロス/デッドクロス」と同じ発想だが、LRI同士のクロスなのでシグナルが速い

設定:

  • 短期LRI:期間20(ファスト)
  • 長期LRI:期間100(スロー)

ロングシグナル: 短期LRI(20)が長期LRI(100)を下から上にクロス
ショートシグナル: 短期LRI(20)が長期LRI(100)を上から下にクロス

ストップロス: エントリーバーの直近スイングポイント(高値/安値)の外側に設定。ストップロスの設定方法の詳細はこちら

利益確定:

  • 短期LRIと長期LRIが再度クロス(反対シグナル)
  • 長期LRIの傾きがフラットになる
  • 直近の明確なサポート・レジスタンスに到達

推奨: H4〜Daily時間足。マルチタイムフレームで使う場合は、上位時間足(Daily)のLRI(100)でトレンド方向を確認し、下位時間足(H1)のLRI(20)でエントリータイミングを計る。

手法③:LRI + MACD併用(精度向上)

LRIのトレンド判定とMACDのモメンタム確認を組み合わせ、シグナルの信頼度を高める手法。

ロングエントリーの条件:

  1. LRIが上昇色に変化
  2. MACDのシグナル線がゼロラインを上方にクロス(またはゴールデンクロス)
  3. 両方のシグナルが揃ったバー(または直近の数バー以内)でエントリー

LRIとMACDのタイミング差: LRIの色変化はMACDのクロスよりも平均2〜5本早く出現する。この「時間差」を活用して、LRIの色変化で準備 → MACDの確認でエントリーという2段階アプローチが取れる。MACDの確認を待つことでダマシが減り、LRIの速度を活かしつつ精度を向上できる。

手法④:LRI + Stochastic併用(反転狙い)

トレンド追従のLRIに、過熱感を測るStochasticを組み合わせた手法。

ロングエントリーの条件:

  1. LRIが上昇色に変化(上昇トレンド開始)
  2. Stochastic(14, 3, 3)が20以下(売られすぎ)から反転上昇
  3. Stochasticの%K線が%D線を上方クロス
  4. → ロングエントリー

特徴: LRI単独では「トレンドが変わった」ことしか分からないが、Stochasticを加えることで「トレンド変化+過熱感の解消」という二重フィルターがかかる。特に押し目買い・戻り売りで威力を発揮する。

4手法の比較と選び方

手法 難易度 シグナル速度 精度 推奨場面
① LRI色変化 ★☆☆ 最速 やや低い 明確なトレンド相場
② デュアルLRIクロス ★★☆ 速い 中程度 中長期トレンドフォロー
③ LRI+MACD ★★☆ やや遅い 高い ダマシを減らしたいとき
④ LRI+Stochastic ★★★ 中程度 高い 押し目買い・戻り売り

初心者は手法①からスタートし、ダマシの頻度に悩んだら手法③に移行するのが自然な学習パスだ。

LRIの弱点と注意点

①レンジ相場で頻繁にダマシが発生する

LRIはトレンド追従指標であり、レンジ相場では価格がLRIを何度もクロスして色が頻繁に変わる。対策として、ボリンジャーバンドのBandWidth(バンド幅)やADXでレンジとトレンドを見分け、レンジ時はLRIのシグナルを無視する運用が有効だ。

②期間設定に依存する

LRIは選択した期間によってラインの形状が大きく変わる。短すぎるとノイズに反応し、長すぎるとトレンドの変化に遅れる。複数の期間(例えば20と50と100)を同時表示し、一致している方向のみトレードするという手法で、期間依存のリスクを軽減できる。

③未来を予測するわけではない

LRIは「過去のデータから現在の最適な回帰直線の端点」を示すだけで、将来の価格を予測しているわけではない。突発的なイベント(経済指標発表、要人発言、地政学リスク)には対応できない。重要イベント前はポジションを軽くするか、ストップを絞る運用を心がけよう。

④LRI単独でのトレードは非推奨

どの技術指標にも言えることだが、LRI単独でのトレードは推奨しない。LRIの速さはメリットであると同時に「ダマシの速さ」でもある。MACD、Stochastic、RSIモメンタムDeMarkerなど、異なる計算ロジックの指標と必ず併用すること。

他のインジケーターとの関連性

ボリンジャーバンドとの共通基盤

ボリンジャーバンドの中央線は移動平均線(通常SMA20)だが、これをLRIに置き換えたカスタムインジケーターも存在する。ボリンジャーバンドの標準偏差バンドと線形回帰を組み合わせることで、「回帰ベースのフェアバリューからの乖離」を可視化できる。

モメンタムとの補完関係

モメンタムインジケーターは「n期間前の価格との差」をシンプルに計算する指標であり、トレンドの勢いを数値化する。LRIがトレンドの「方向」を示し、モメンタムがその「勢い」を示す——この組み合わせは論理的に補完的だ。LRIが上昇色でモメンタムも上昇中ならトレンド継続の確度が高く、LRIは上昇色だがモメンタムが減少し始めたらトレンド減速の初期サインと読める。

まとめ——LRIは「移動平均線の統計学的アップグレード」

線形回帰インジケーター(LRI)の本質は、移動平均線と同じ「トレンド追従」の役割を、統計学的により優れた方法で実現することにある。

  • 速い反応: 最小二乗法の回帰端点は、算術平均よりも価格変動に速く追従する
  • 動的なトレンドライン: 新しいバーごとに自動再計算され、常に最新の回帰直線を反映する
  • 3指標の体系: LRI(端点)、TSF(予測値)、LR Slope(傾きの数値化)を理解すれば、線形回帰の分析力が飛躍的に向上する
  • 弱点はレンジ相場: トレンド追従型の宿命であり、ADXやボリンジャーバンドとの併用で補う

移動平均線をメインに使っているトレーダーは、まず同じ期間のLRIを並べて表示してみてほしい。価格追従の速さの違いを実感できるはずだ。

まずはデモトレードで各手法を試し、自分のスタイルに最適な期間設定と組み合わせを見つけてほしい。