FXのSupply and Demand(サプライ&デマンド)手法―ゾーンの見つけ方と実践トレード

FXのチャート分析には、移動平均線やRSIなどさまざまなテクニカル指標があります。でも「そもそも価格はなぜ動くのか?」という根本に立ち返ると、答えはシンプルです。

買いたい人が多ければ価格は上がり、売りたい人が多ければ下がる。

Supply and Demand(サプライ&デマンド)手法は、この「需要と供給のバランスが崩れた場所」をチャート上で見つけて、トレードに活かす考え方です。インジケーターの数値ではなく、どこに注文が溜まっているかという価格帯の構造そのものを見るのが最大の特徴です。

海外ではSam Seidenがシカゴ・マーカンタイル取引所での経験をもとに体系化し、広く知られるようになりました。日本ではまだ馴染みが薄いですが、プライスアクションを重視するトレーダーの間では定番の分析手法になっています。

Supply and Demandとは?基本の考え方

まず用語を整理します。

Supply(サプライ)= 供給――売り注文が集中している価格帯のことです。この価格帯に到達すると、利益確定や新規の売りが入りやすくなります。

Demand(デマンド)= 需要――買い注文が集中している価格帯です。この価格帯に価格が戻ってくると、押し目買いが入りやすく反発しやすい特徴があります。

日本語では「需要と供給」が一般的ですが、FXトレードの文脈では英語のまま「サプライ&デマンド」と呼ぶのが主流です。

Supply and Demandゾーンのイメージ図
出典:B2Broker – Supply and Demand Dynamics in Forex

上の図のように、チャート上では線ではなく帯(ゾーン)として描画します。これがサポート&レジスタンスとの大きな違いです。

なぜゾーンで価格が反応するのか

「過去に急騰・急落した場所に戻ると、なぜ再び反応するのか?」

その理由は、機関投資家の注文の仕組みにあります。

銀行やヘッジファンドは数千万〜数億円規模の注文を出します。しかし、これだけの量を一度に市場へ投入すると価格が大きく動いてしまい、自分にとって不利なレートで約定してしまいます。

そこで彼らは注文を分割して出すのが一般的です。最初の一部を約定させて価格が急騰(または急落)した後、残りの注文はまだその価格帯に残っています。価格が再びその水準に戻ってくると、残りの注文が発動して再度反発が起きる――これがゾーンで価格が反応するメカニズムです。

つまり、Supply and Demand手法は、未消化の大口注文が残っている場所を見つけてトレードする理論です。

Demandゾーンの見つけ方

Demandゾーン(需要ゾーン)は、価格が急上昇した起点になっている場所です。

具体的な手順はこうなります。

① 急騰の起点を探す。 チャート上で、価格がしばらく横ばい(もみ合い)になった後、強い陽線で一気に上昇している箇所を見つけます。

② もみ合い部分をゾーンとして囲む。 急騰する直前の横ばいエリアを、長方形ツール(四角形)で囲みます。上辺はもみ合いの高値、下辺は安値です。

③ ゾーンの上端あたりまで戻ったら買いのエリアになる。 価格が上昇した後、再びそのゾーンまで下落してくると、反発する確率が高くなります。

ポイントは、急騰の勢いが強ければ強いほど、ゾーンの信頼性が高いということです。大きな陽線や窓(ギャップ)を伴う上昇は、大口の買い注文が入った証拠です。

Supplyゾーンの見つけ方

Supplyゾーン(供給ゾーン)は、Demandの逆です。価格が急落した起点を探します。

① 急落の起点を探す。 横ばいの後に強い陰線で急落している箇所が候補です。

② もみ合い部分をゾーンとして囲む。 急落する直前のレンジを長方形ツールで囲みます。

③ ゾーンの下端あたりまで戻ったら売りのエリアになる。 急落後に再びそのゾーンまで上昇してくる場面で、戻り売りが狙えます。

Demand・Supplyどちらにも共通する大切なルールがあります。それは「まだ一度もテスト(再訪問)されていないゾーンほど強い」ということ。何度もゾーンが試されるたびに残りの注文は消化されていくため、回数を重ねるほどゾーンの信頼性は下がります。

他の分析手法との違い

Supply and Demandは、既存のテクニカル分析とどう違うのでしょうか。

サポート&レジスタンスとの違い。 サポレジは過去の高値・安値に「線」を引きます。Supply and Demandは幅のある「帯(ゾーン)」で捉えます。線よりもゾーンのほうが、実際の注文の厚みを反映しているため、エントリーの判断に余裕が生まれます。

RSIや移動平均線との違い。 これらは価格データを加工した「遅行指標」です。過去の変動から計算されるため、どうしてもシグナルが遅れます。Supply and Demandは価格の構造そのものを見るため、先行的な判断ができるのが強みです。

水平線トレードとの違い。 水平線は1本の線で判断するため、ヒゲで引くべきか実体で引くべきかで迷いが生じます。ゾーンであれば、ヒゲから実体までの幅を含めて判断できるので、迷いが減ります。

ただし、Supply and Demandも万能なわけではありません。強いトレンドが発生しているときはゾーンが簡単に突破されることもあります。上位足のトレンド方向を確認した上で使うのが鉄則です。

実践的なトレードの手順

では、実際のトレードではどう使うのか、4ステップで解説します。

ステップ1:日足・4時間足で強いゾーンを特定する。 まず上位足で大きな急騰・急落の起点を探し、ゾーンを描画します。上位足のゾーンほど残っている注文量が大きく、信頼性が高くなります。

ステップ2:1時間足以下でタイミングを計る。 上位足のゾーンに価格が接近したら、下位足に切り替えます。ゾーン内でピンバーや包み足(エンゴルフィング)などの反転シグナルが出たら、エントリーの準備です。

ステップ3:ゾーンの外側に損切りを置く。 Demandゾーンでロングする場合、損切りはゾーンの下端の少し下に設定します。ゾーンが完全に突破された=注文が消化されたと判断して撤退です。

ステップ4:反対側のゾーンを利確目標にする。 Demandゾーンで買ったなら、上にあるSupplyゾーンの手前が利確ポイントです。この方法なら自然とリスクリワード比(RR比)の良いトレードが組み立てられます。

Supply and Demandの注意点

実践する前に、知っておくべき注意点が3つあります。

① ゾーンは「線」ではなく「帯」。 長方形ツールで幅を持たせて描画してください。ピンポイントでの反転を期待すると、わずかなオーバーシュートで損切りになります。

② 強いトレンド中はゾーンが破られやすい。 上位足が明確なトレンドを形成しているとき、トレンドに逆らう方向のゾーンは突破されやすくなります。トレンド方向に沿ったゾーンだけを使うのが安全です。

③ 何度もテストされたゾーンは弱い。 2回、3回と同じゾーンで反発が繰り返されると、残っている注文がどんどん消化されます。まだ一度も価格が戻っていない「フレッシュなゾーン」を優先的に狙いましょう。

まずはデモトレードで練習しよう

Supply and Demandは、チャートの見方がガラッと変わる手法です。今までインジケーターの数値ばかり見ていた人にとっては、新鮮な視点になるはずです。

ただし、ゾーンの描画には慣れが必要です。最初から完璧に引ける人はまずいません。まずはデモトレードで過去チャートにゾーンを描いてみて、「実際に反応しているか」を自分の目で確認してみてください。

慣れてきたら、少額のリアルトレードで試す。その段階的なステップが、Supply and Demandをモノにする最短ルートです。

よくある質問

Q. Supply and Demandとサポレジは同じものですか?
似ていますが違います。サポレジは過去の高安値に「線」を引くのに対し、Supply and Demandは注文が溜まった「帯(ゾーン)」を見ます。ゾーンのほうが幅があるぶん、実践的なエントリー判断ができます。

Q. どの時間足で使うのが効果的ですか?
ゾーンの特定は日足・4時間足がおすすめです。上位足ほど大口の注文が反映されているため、信頼性が高くなります。エントリータイミングは1時間足や15分足に切り替えて計るのが一般的です。

Q. インジケーターなしでも使えますか?
はい。むしろインジケーターに頼らず、ローソク足の動きだけでゾーンを判断するのがこの手法の本質です。MT4やTradingViewの長方形ツールがあれば十分に実践できます。

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