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日本政府・日銀による為替介入の実体


2022年9月22日夕刻、米ドル/円は突然500pips以上下落しました。
これは政府・日銀による為替介入による急落でした。
その後、10月に入り米ドル/円は更に上昇し、151円90銭台まで進みました。
10月24日には再度、介入らしき変動がありました。
今回は、財務省が発表しているデータを基に、介入を行った時の状況とその後の推移を見て、効果があったのかを検証してみます。

日本政府・日銀による為替介入とは?

為替介入は外国為替平衡操作といい、外国為替市場への介入を財務省管轄下の「外国為替資金特別会計」が指示し、財務省の命令で日本銀行が行ないます。
投機筋などによる行き過ぎた為替変動は実体経済に対して悪影響を与える場合があり、これを是正する目的で為替介入を行います。
財源は財務省の外国為替資金特別会計捻出される資金をもって取引が行なわれます。
円売りドル買い介入の場合、短期日本国債を発行し、日本の国債市場にて売却しこれにあてます。
ドル売り介入の場合は、外貨準備から米国債を取り崩して工面してこれにあてます。

過去の為替介入とその効果

1991年~1996年までの為替介入

下記日足チャートの黄色縦線の日に為替介入が行われました。
連続して行われた介入は太く描画されています。
※当日の年間高値・安値は全て米ドル/円で記載しています。

実施年

月日

介入総額

売買通貨

年間高値

年間安値

1991年

5月~8月

702億円

ドル売り円買い4回

142.100円

123.750円

1992年

1月~8月

7170億円

ドル売り円買い23回

134.950円

118.650円

1993年

4月~9月

2兆5532億円

ドル買い円売り49回

126.210円

100.250円

1994年

2月~11月

2兆639億円

ドル買い円売り55回

113.650円

96.050円

1995年

2月~9月

4兆9589億円

ドル買い円売り43回

104.800円

79.750円

1996年

2月

1兆6037億円

ドル買い円売り5回

114.850円

103.070円

◆1991年の介入
ドル売り100億円~200億円程度の介入ですと、1円落に終始しますが上昇を抑える効果はありました。
◆1992年の介入
126円・127円程度で介入するのは、現在の151円からは考えられないほど低い金額です。
1月17日は63億円と低い金額の介入ですが、4円落としています。
他の日の介入は、やはり1円~2円程度の下落で終わっています。
◆1993年の介入
一転してドル買いの介入を始めた年です。
8月17日は2千億円の介入をしていますが、1円程度の上昇で終わっています。
翌々日19日には170億円の介入で6円上昇しています。
◆1994年の介入
1千億円超えの介入を3回行っていますが、米ドル/円を上昇させられたのは、2円止まりでした。
◆1995年の介入
9月に8千億円越えの介入をしていますが、上昇は2円弱になります。
◆1996年の介入
1兆円以上で介入して、103円前後の米ドルを買い支えるのは疑問です。

1997年~2000年までの為替介入

実施年

月日

介入総額

売買通貨

年間高値

年間安値

1998年

4月~6月

3兆470億円

ドル売り円買い3回

147.710円

111.650円

1999年

1月~12月

7兆6410億円

ドル買い円売り15回

124.820円

101.300円

2000年

1月~9月

3兆1731億円

ドル買い円売り6回

115.110円

101.390円

◆1998年の介入
4月~6月に3兆470億円の「ドル売、円買」介入⇒130円台まで進んだ円安是正
6月17日の介入は8円強、下落させていますので、効果は絶大でした。
この年、外国為替業務の自由化で一般投資家もFX市場への参加が可能になりました。
◆1999年の介入
1月~12月に7兆6411億円の「円売、ドル・ユーロ買」介入⇒120円台の円高是正
この年は101円~120円で米ドル買いの介入をしています。
2円~3円上昇していますが、介入の必要性が感じられません。
始まったばかりの、ユーロ買いの介入もしています。
注)1999年1月1日にEU加盟国のうち11カ国において単一通貨「ユーロ」が誕生
◆2000年の介入
101円台からの米ドル・ユーロ買いの介入ですが、上昇幅は2円~3円でした。

2001年~2004年までの為替介入

実施年

月日

介入総額

売買通貨

年間高値

年間安値

2001年

9月

3兆2107億円

ドル買い円売り10回

132.080円

115.790円

2002年

5月~6月

4兆162億円

ドル買い円売り8回

135.190円

115.480円

2003年

1月~12月

20兆4250億円

ドル買い円売り91回

121.920円

106.720円

2004年

1月~3月

14兆8313億円

ドル買い円売り47回

114.940円

103.400円

◆2001年の介入
アメリカの同時多発テロ事件の影響による円高の阻止のための介入ですが、米ドル/円110円台での介入は必要性が感じられません。
◆2002年の介入
5月22日~6月28日に4兆162億円の「円売、ドル・ユーロ買」介入⇒123円台後半まで急騰した円高の是正
◆2003年の介入
5月8日~2004年3月16日に32兆8694円の「円売、ドル・ユーロ買」介入⇒デフレーションの克服、円高の是正。
「為替操作国」と言われるのも分かるほど、為替介入をしました。
一時的に上昇はしますが、更なる売りを呼び込み、101円台まで下落しました。
◆2004年の介入
この年2月・3月に連日為替介入をし、114円台まで上昇させますが、結局介入時のレートを大きく下回って終わった年になりました。
介入時の上昇幅は2円程度です。

2010年~2011年までの為替介入

実施年

月日

介入総額

売買通

年間高値

年間安値

2010年

9月15日

2兆1249億円

ドル買い円売り1回

84.492円

80.252円

2011年

3月~11月

14兆2971億円

ドル買い円売り7回

85.510円

75.455円

◆2010年の介入
9月15日に2兆1249億円の「円売、ドル・ユーロ買」介入⇒15年ぶりに82円台後半まで上昇した円高の是正
◆2011年の介入
東日本大震災後の投機的な市場の抑制のために、3月18日に先進7カ国(G7)による「円売、ドル買」介入を行いました。
この年、史上最安値になる米ドル/円75.445円まで下落しました。
相場は、一時81.50円近辺まで約2円上昇しました。
※2011年8月5日に4兆5129億円の「円売、ドル買」介入⇒投機的な市場の抑制
※2011年10月31日に8兆722億円の「円売、ドル買」介入⇒投機的な市場の抑制
※2011年11月1日~11月4日に1兆195億円の「円売、ドル買」介入⇒投機的な市場の抑制。(当介入は覆面介入であったことを財務省が2012年2月7日に正式発表

2022年の為替介入

実施年

金額

売買通貨

当日高値

当日安値

2022年

9月

22日

2兆8382億円

ドル売り円買い

145.896

140.343

 

10月

22日

不明

ドル売り円買い

151.937

146.088

   

24日

不明

ドル売り円買い

149.699

145.449

◆2022年の介入
9月22日に2兆8382億円の「ドル売、円買」介入⇒1ドル145円台にまで進んだ円安の是正
日米の金利差拡大で151円90銭台まで円安が進んでいましたが、22日午前1時に政府・日銀による為替介入により、円相場は短時間で一時145円台まで7円弱米ドル/円は急落しました。
24日にも政府・日銀による為替介入と思われる、米ドル/円の下落がありました。

まとめ

1991年から米ドル/円の推移と政府・日銀による為替介入を調査してみました。
調査してみますと、連日介入を複数回した年(1994年・1995年・2003年・2004年・2011年)も多々ありました。
「米ドル売り・日本円買い」「米ドル買い・日本円売り」どちらでの介入もその後、更に「買われる」「売られる」現象が生じています。
投機筋などの大口に、一時的に介入の警戒感を与えるのも目的の一つとなっています。

介入の効果が一時的になるのか、相場の流れを変えるものなのかしっかりと見極めることが大切です。

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