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3月のトルコリラの相場急変のきっかけと今後の見通し


1ヶ月前の3月20日以降のトルコリラの大変動。
この変動の背景には一体何があったのでしょうか。
トルコリラのトレードを行っている人だけでなく、その他の通貨でも起こりうる急変のきっかけと背景を読み解いていきましょう。

トルコリラ急落のきっかけ

トルコのエルドアン大統領は3月20日にトルコ中央銀行のアーバル総裁を解任し、 後任にカブジュオール氏を起用すると発表しました。

前任のアーバル氏が総裁に就任したのは昨年11月。
当時10.25%だった政策金利をそれ以降積極的に引き上げて主要国では最高の19%にすることで、インフレ抑制に向けて積極的な金融引き締め策を実施し、幅広い市場関係者の評価を勝ち取りました。
主要国では予想を上回る200ベーシスポイントの利上げに踏み切り、リラを3%余り押し上げていました。
市場参加者の中銀に対する信認は高まり、この間、トルコ・リラも対円で 20%超上昇していました。

ところがこの上昇を無残にも打ち消したのが、突然の解任劇です。
総裁の交代によって、インフレが抑制できてないにもかかわらず緩和的な金融政策運営に転換するとの懸念が台頭し、週明け22日にリラは対円で7%超下落しました。

以下が解任前後の実際のチャートです。

円トルコリラ 日足

(引用元 investing.com)

ドルトルコリラ 日足

対円も対ドルもどちらも解任発表後の週明けに大きく下落しているのがわかります。

その後のトルコの動き

その後も大統領の解任劇は続きます。
3月30日には、副総裁の一人のチェティンカヤ氏を突然解任。
ドゥマン氏を後任の副総裁に任命しました。

同日、カブジュオール新総裁は、インフレ率の持続的な低下が指標で確認されるまで、インフレ率を上回る水準に政策金利を維持すると表明していますが、カブジュオール氏が総裁就任前に利上げ批判していたことや、利下げに消極的だったチェティンカヤ氏の副総裁解任、そして、利下げを求める大統領と、利下げへの懸念は払拭できない状況が続いています。

そして4月15日、カブジュオール新総裁の下での初の金融政策決定会合では、政策金利の据え置きが決定されました。
利下げこそなかったものの、その後の声明では、今回に決定について引き締め姿勢を維持とだけ述べ、必要に応じて追加的な引き締めを行うとのタカ派的な文言は見られなかったため、この声明をうけてトルコリラはさらに下落し、未だ上昇の兆しは見えてきていません。

過去の解任との比較

トルコの中銀総裁の解任は過去2年で3回目です。
一度目は2019年7月のチェティンカヤ総裁の解任。
二度目は2020年11月のウイサル総裁の解任です。
チェティンカヤ総裁は利下げに消極的で、逆にウイサル総裁は利上げに消極的でした。
この2回と比較すると、今回は一度目のチェティンカヤ総裁の解任のときに近い状況と言えます。

チェティンカヤ総裁が解任された時は、通貨安は一時的で、利下げを進める中でも新型コロナウイルス問題が深刻化するまでリラは底堅く推移しました。

当時は
1.インフレ率が鈍化傾向
2.後任のウイサル新総裁は1週間物レポ金利がインフレ率を上回る範囲内で利下げを実施
3.経常収支が黒字基調
という特徴がありました。

カブジュオール新総裁の方針にもよりますが、今回はインフレ率のピークアウトがまだ確認できておらず、経常収支も赤字が続いているため、リラを取り巻く環境は当時よりも悪く、通貨安圧力がかかりやすい状況である点に注意が必要です。

その他の懸念材料

関係者筋によると、エルドアン政権与党の公正発展党(AKP)元議員のカブジュオール氏は21日に開いた銀行関係者との電話会議で、即時の政策変更は計画していないし、どう動くかは物価上昇率次第だと説明したと言われています。

22日に記録したリラの10%近い下落率は、2018年以降で最大。
当時からこれまでにリラの価値は半減し、13年に約25%だったトルコ国債の外国人保有比率は足元で5%程度まで低下しています。

それでもアーバル氏は短い在任期間中、投資家をある程度呼び戻す役割を果たし、18%のリラ上昇をもたらすとともに、国民や企業が資産価値を維持するためにリラ建てからドル建てに切り替える「ドル化」の流れを食い止めてきました。

今月公表されたデータを見ると、トルコ国民が国内銀行に保有する外貨建て預金残高は2300億ドルで、今年1月に付けたピークの2600億ドルからわずかに減少していただけでした。

ただ、投資家の間で大きな不安の種になっているのが、中銀の手元に外貨準備があまり残っていないことです。さまざまな「スワップ」取引のポジションを勘案し、試算したところでは、差し引きの外貨準備は400億ドル前後のマイナスになってしまうようです。

多くの投資家達は、エルドアン氏の娘婿のアルバイラク氏が財務相を務めていた時代に1200億ドルもの外貨準備が市場介入に投入されたとみています。

まとめ

大暴落の背景には中央銀行総裁の交代が大きく関わっていました。
利下げや利上げという政策金利は相場に直結する要因です。
(「政策金利と為替相場との関係」参照)
そしてそれを決定する中央銀行の総裁の金利に対する方針はもまた、相場にも影響します。

今回はそれに加えて、大統領要請での突然の交代となったことで、後任に指名された新総裁が大統領の圧力を色濃く受けてしまうのではとの懸念もあります。

トルコリラは高金利通貨としてスワップトレードでも人気ですが、このような相場の急変時にはスワップポイントや急落によってマイナスになってしまう可能性も高いので、トレードをする際は気をつけておきましょう。

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